見出し画像

「本の雑誌」2022年5月号発売!

本の雑誌2022年5月号467号
■A5判並製 ■144ページ 978-486011-529-6

その前口上もしくは編集後記の後記


今月の特集は「出版業界で働こう!」です。実は私、娘が大学4年生となり、いわゆる就活の時期を迎え(実際には就活していない)、いろんな話を聞いているうちに現代の就活自体に俄然興味が湧き、このような特集を組むことにしました。

いかんせん私自身はまともな就活をしたことがありません。高校卒業後2年間フリーターをした後に、父親の町工場を継ごうと機械設計の専門学校に通い、なんと学校長賞を受賞するまで設計・製図に夢中になりました。

ところが卒業が近づいてきたそのとき、同級生がみな進路指導室にずらりと並べられた求人ファイルを必死にチェックしている姿をみて、なぜか突然「おれはやっぱり出版社で働きたい」と謎の決意をしてしまい、二度目のプー太郎になりました。

ただし高らかな目標を掲げた割に、何ら努力するわけでもなく、専門学校卒業後は毎朝パチンコ屋のモーニングに並んで、内定どころか「777」が揃うのを毎日願いつつスロットマシーンのボタンを推しておりました。

そんな怠惰な日々を送るなかいくつかの出版社に働きたいと手紙を書いたのですがもちろん断られ、いやはや参ったぞと思った頃(ほんとはあんまり思ってなかったかも)、朝日新聞の求人広告で見つけた歯科の専門出版社に応募してみました。するといきなりの社長による面接を受けることになり、なぜか採用となりまして翌週から晴れて「出版業界」で働けることになりました。

今あるのはすべてその歯科の専門出版社「クインテッセンス出版」に入れたおかげです。もし当時の社長に何かあったら駆けつける所存であります。

というわけで私に限らず本の雑誌社のスタッフというのは似たような経緯でこの出版業界に入ったものばかりでして、まともに正門をくぐって出版業界に到達しておりません。

だからそのまともな正門のくぐり方というのを知ってみたいという興味もあり、この特集は大変楽しく、しかしできあがってみるとこんな厳しい正門を通れるわけないだろうと絶望にかられる特集にになりました。

もしかすると「本の雑誌」の読者の方にはあんまり興味のない特集かもと、若干というか多大な不安がないわけではないのですが、「本の雑誌」ならではの切り口と、「本の雑誌」だからこそとみなさん胸襟を開いて原稿執筆&座談会で発言していただけましたので、ぜひぜひ楽しんでいただければと思います。

あっ!!! そしてもっとも大切なニュースは、椎名さんの新連載がスタートしたということであります。そのタイトルたるや、あの自身の名作にかけて「哀愁の町に何が降るというのだ。」です。盟友沢野ひとしさんとの出会いから沢野ひとしという謎多き人間の実像に迫る…そうです。いやはやさすが椎名さん!という面白さです。

さて、今月のおすすめ本は、10年後、20年後にも「あの本、凄かったよね」と語り継がれるレベルの小説、早見和真『八月の母』(KADOKAWA)です。親ガチャに(おそらく著者も含めて)血まみれになって挑んだ物語、とにかく読んで欲しいです。

早見和真『八月の母』(KADOKAWA)

ではではお騒がせしました。
(「本の雑誌」企画担当:杉江)

内容紹介

特集:出版業界で働こう!
 さあ、入社入学の春がやってきた! 出版業界にも新入社員が入ってきて、大変めでたいが、では彼らはどうやって業界の門を叩いたのか!? というわけで、本の雑誌5月号の特集は「出版業界で働こう!」。面接担当者マル秘匿名座談会から、出版社に入った人、入れなかった人の就活戦記に出版業界ブックガイド、出版社だけじゃないぞ、の出版業界ハローワークすごろくに現役出版業界人の転職したい出版社、そして読者の働きたい出版社まで、就職にも転職にもお役立ちの出版業界就活特集なのだ!

新刊めったくたガイドは、吉野仁が船上でゴシックが炸裂する『名探偵と海の悪魔』にまいりましたと白旗を上げれば、藤ふくろうは革命と物語文化が融合した血と涙のアラベスクを堪能。大森望が秀作爆笑作揃い踏みのAIロボットアンソロジー登場を寿げば、古山裕樹は城山真一『看守の信念』の大技に驚愕。高頭佐和子が鈴木るりか『落花流水』の迷走する恋心に悶え苦しめば、すずきたけしは沈没船や遺跡を探る『水中考古学』の世界で疑問氷解。そして北上次郎は麻雀小説『渚のリーチ!』に目頭を熱くして、ホント、嬉しい! さあ、おじさんが泣いて喜んだ麻雀小説の世界にあなたもリーチ一発だ!

今月は読み物作家ガイドで牧原勝志が「ジャンルを超える強靭な力」朝松健の10冊を紹介。日下三蔵がいよいよ書庫の奥の奥を探検すれば、内澤旬子はリフォームでバトル。黒い昼食会がご当地京太郎本を望めば堀井憲一郎は本屋大賞ノミネート作10冊に挑戦! そしてなんとなんと椎名誠「哀愁の町に何が降るというのだ。」の連載がスタートだ! さあ、新しい職場も学校も本の雑誌5月号があれば怖くない。円盤と妖精とシモントンさんにお願いしながら春の読書を満喫しよう!

目次

本棚が見たい!
5月の書店 大地屋書店大山店/5月の本棚 川村康文
哀愁の町に何が降るというのだ。/捕虜収容所みたいな風景 椎名 誠
そして奇妙な読書だけが残った/円盤と妖精とシモントンさんパンをください 大槻ケンヂ 

特集:出版業界で働こう!
出版社面接担当者座談会/本が好きなら受けてほしい!
私の就活失敗記! 梨ちゃん 
酒は飲むな。 照山朋代 
あきらめないためのナゾ理論 麻田江里子 
3つの潜入大作戦! 青木健祥 
面接&筆記試験の思い出 古市怜子 
業界の過去から現在までを眺める本 どむか 
出版業界人生すごろく座談会/夢と希望の出版業界ハローワークすごろくだ! 
もし転職するならこの出版社に行きたい!
 梶原治樹/徳永圭子/西川恭兵/谷口真彦/平 あすか/青木大輔/竹中 朗/E本/大塚真祐子/塩澤快浩
読者アンケート/この出版社で働きたい!

SF音痴が行くSF古典宇宙の旅/コロナ対策はマイクル・クライトンに見習え!? 高野秀行
古本屋台/Q.B.B.
断捨離血風録/書庫の奥の奥 日下三蔵 

新刊めったくたガイド
船上でゴシックが炸裂する『名探偵と海の悪魔』にまいった! 吉野 仁
革命と物語文化が融合した血と涙のアラベスク 藤 ふくろう
秀作爆笑作揃い踏みのAIロボットアンソロジー登場! 大森 望
城山真一『看守の信念』の大技を受けてみよ! 古山裕樹
鈴木るりか『落花流水』の迷走する恋心が愛おしい! 高頭佐和子
沈没船や遺跡を探る『水中考古学』の世界 すずきたけし
麻雀小説『渚のリーチ!』に目頭が熱くなる! 北上次郎

月村了衛『脱北航路』の熱きクライマックスを見よ! 宇田川拓也
幸せな家族の陰に潜むもの ♪akira
「住み開き」で街とつながる本屋 和氣正幸
中国女性SF作家14人が一挙登場の『走る赤』 山岸真
得体のしれない怖さが迫るモクモクれん『光が死んだ夏』 田中香織
柏の本文化を支える大きく優しい名前の店 小山力也
本のことを全部やる人「H.A.B」 竹田信弥
ナマズと犬とブルース 下井草 秀

弱虫DIY/リフォームでバトル 内澤旬子
ユーカリの木の蔭で/馬の名前 北村 薫
サバイバルな書物/物語る移民一族二〇〇年 先祖代々「業」の痕跡 服部文祥 
黒い昼食会/ご当地京太郎本がほしい! 
文芸記者列伝/怒られ通し 川口則弘
東京ロシアンルーレット/譲りたくない一線 江部拓弥
鉄道書の本棚/ご当地色豊かなシベリア鉄道の街 V林田
私がロト7に当たるまで/石ころチャンネルの今後 宮田珠己
連続的SF話/見慣れぬ文字の蒐集本 鏡 明
南の話/『グッドナイト・ムーン』の怪(2) 青山 南
そばですよ/北海道にしかない漆黒のそばを荒木町、杉大門通りで。 平松洋子
極東のウクライナ人 円城 塔 
翻弄される給食 べつやくれい 
時間SFの幕の内弁当 藤岡みなみ 
ドングリの毒の謎 風野春樹 
ホリイのゆるーく調査/本屋大賞ノミネート作10冊に挑む 堀井憲一郎
神保町物語外伝/終焉の竹久夢二 沢野ひとし
朝松健の10冊/ジャンルを超える強靱な力 牧原勝志

続・棒パン日常/未知のジャンル 穂村 弘 
三角窓口/河津掛けの語源となった人はどっちだ!? 他
即売会の世界 石川春菜 

今月書いた人
今月本の雑誌に遊びに来た人
掲載図書索引
後記

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?