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低スペック独身女(30代)、ひとり暮らしする/内見編

「私が死ぬか、父親をころすかです」
 泣きながら福祉サービスのLINEアカウントに、SOSを送ったのは2023年の1月11日のこと。

 少しだけ、私と父親の話を書かせてください。
 死にものぐるいでひとり暮らしを始めた大きな理由なので。

 私は、現在(2023年12月)30代独身で恋人もいない。
 20代後半に重度のうつ病と不安障害を発症し、当時働いていた接客業で「戦力外通告」を受け、それから長い闘病生活と無職の時代を過ごす。
 現在は福祉支援を受けながら、B型就労という場所で週5日で在宅勤務をしている。
 B型は自分の体調や精神面に合わせて仕事ができるが、時給が最低賃金よりも低い(基本的にそういうものです。A型になるとまた条件や時給が変わってくる)。
 貯金はギリギリ300万くらいで、長らく実家ぐらし。

 さて、私の父は悪い意味で昭和の男だ。
 今は定年退職をしているが、現役時代はなにかと「誰のおかげで生活できてると思ってる!」と素面で言えてしまう人だ。
 根は優しい人なのだが、その優しさは「気まぐれ」。優しく笑っていたかと思うと、次の瞬間には鬼の形相で怒り出す。
 自分に非があっても決して謝らない。
「お父さんが悪いんだから、謝ってよ!」とガチ泣きする私(いい大人)に対して、無視。なにも感じていないようだった。
 また、本人は否定しているが他の人(親戚や近所の人)からみてもわかるほど姉と私とでの扱いに差をつける。
 姉には惜しみなく愛情を注ぐが、私には気まぐれの愛情しかくれなかった。
 今は私もいい大人なので、この辺はわりきっている。
 だが、父は歳をとるごとに気分屋で理不尽な人間になっていく。
 例えば、車での送迎。
 父に頼る気がなかったので、自分で歩いて出かけたり帰ったりしようとしていると、父が「駅まで送ってあげるよ」「迎えにいくよ」と言う。
 それはありがたい話なので、「ありがとう!」と感謝を伝えるが、父の機嫌が変わると車の中で「俺の運転をあてにするな」と言う。
「もう二度と車に乗せないからな!」は、もはや毎度の決め台詞。

 そんな父との共同生活から最初に離脱したのは姉だった。
 父とのケンカが後押しとなり、速攻でマンションを決めて2022年に家を出た。
 正直、私はうらやましかった。
 貯金があるとはいえ、私の月収ではひとり暮らしは現実的ではない。

 けれど、前述した通り、今年の1月、私はもう父との共同生活に限界を感じていた。
 本気で自ら命を絶つか、寝ている父親をゴルフバットで殴り殺すか。
 どちらかの未来しか見えなかった。

 福祉サービスの人はすぐに動いてくれた。

 私に提示された選択肢は3つ。

・一時避難場所となる施設への短期入居 
・マンション型グループホームへの入居
・市内のマンションへの入居

 一泊数千円で過ごせる一時避難場所の施設は車を使わないと(送迎サービスはない)いけないことや、満室の場合、利用できないという条件、根本的な解決にならないため選択肢から真っ先に消えた。

 マンション型グループホームへの入居は、家賃が安いし、ほぼマンションと一緒の構造なのでプライバシーも守られる。
 これは魅力的で、いくつかのグループホームを見学した。
 だが当時、月に一度、B型就労のある施設に通う必要があった。
 条件のいいグループホームは、人気があり、どこも満室。空きがのあるグループホームは、B型施設のある場所からだいぶ離れてしまう。
 まだ電車に乗る体力も気力もなく(電車もバスも人の多さや雑音で具合が悪くなってしまう)、なかなか「ここだ!」というグループホームが決まらない。

 残るは市内のマンションに入居。
 グループホームと違い、市外のマンションに住む場合、現在の福祉サービスからのサポートが受けられなくなる。
 一からまた新しいスタッフさんとの信頼関係を築く労力を考えると、できることなら市内がいい。
 福祉サービスとつながりのある不動産屋さんを介して、市内のマンションを探すも「家賃が、管理費が……」「部屋の雰囲気がピンとこない」と空振りが半年以上、続く。
 
 やはり、月収を上げなくてはいけない。
 そこでB型就労のスタッフさんに事情を説明し、困っていることを正直に伝えた。
 すると、スタッフさんから
・今よりも複雑な在宅作業
・週に一回の通所が必須
 という条件で日給が600円アップすることが可能だという。

 私は即答した。
「ぜひ、その条件でやらせてください」

 それでも月収10万円未満。
 できるだけ貯金を切り崩さずにすむ家賃の物件はないのか……。
 スー◯とにらめっこすること数ヶ月。

 駅チカで家賃が3万4000円の物件を見つけた。
 だが、間取りを見ると「なんだかトンチキな間取りだな……」と期待度はゼロに近かった。
 それでも内見してみようと思い、今年の11月に内見を申し込んだ。
 内見当日、本当に期待値はゼロだった。
 けれど「あれ? 思ったよりトンチキな物件じゃない。なんだかいい感じ?」と感じた。
 窓から見える紅葉も綺麗だし、名も知らぬ野鳥の姿も確認できる。
 駅チカだけど、どこか、のどか。
「ここなら土地勘もある場所だし、スーパも図書館も実家より近くなる」
 しかも内見の際にわかったのだが、11月中に入居できればかかる初期費用は、不動産屋の仲介料と保険料のみの0円キャンペーン中だった。

 不動産屋さんの説明では、今申し込めば10日程度ですべての手続が完了するから11月入居に間に合う。

「ここに入居します!」

 即答だった。

↓つづき↓

低スペック独身女(30代)、ひとり暮らしする/波乱の入居 そして現在|MEGANE (note.com)

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