![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/109226778/rectangle_large_type_2_40fc74088c23d6ec9231b3cf99e3bb2c.jpeg?width=800)
【焼鯖そうめん】若狭から運ばれる鯖がもたらした長浜のソウルフード(滋賀県長浜市)
日本全国の“地域の宝”を発掘する連載コーナー「地元にエール これ、いいね!」。地元の人々に長年愛されている食や、伝統的な技術を駆使して作られる美しい工芸品、現地に行かないと体験できないお祭など、心から「これ、いいね!」と思える魅力的なモノやコトを、それぞれの物語と共にご紹介します。(ひととき2023年7月号より)
滋賀県長浜市のある琵琶湖北東部一帯は、湖北地方と呼ばれる。福井県の若狭で獲れた海産物を運ぶ鯖街道は湖西のルートが知られるが、敦賀から湖北一帯へも若狭方面の魚介が多くもたらされた。
「昔からこの土地では、鯖をよく食べてきたんです」と話すのは、翼果楼の辻郁子さん。しかも「西の鯖街道は酢締めでしたが、湖北には焼鯖が運ばれてきました」と。脂ののった鯖を竹串に刺して一本丸ごと焼き上げた〝浜焼〟で、春の農繁期には農家へ嫁いだ娘に焼鯖を贈ってねぎらう「五月見舞い」の風習が根付いていた。「浜焼を削いで食べ、翌日には残った鯖を炊いて、その汁でそうめんを煮たのが、鯖そうめんの始まりだと思う」と郁子さん。
![](https://assets.st-note.com/img/1687746867274-W5SMbNRDXm.jpg?width=800)
祭事や法事で親族が集まると、大皿に鯖そうめんを盛りその上にどーんと焼鯖を載せてもてなすこともあるが、むしろ鯖そうめんは作り置きする日常茶飯だった。郁子さんが子どもの頃のおやつは、焼鯖そうめんばっかり。お弁当にも持っていったのだとか。翼果楼の焼鯖そうめんは、郁子さんの舌に記憶された母の味だ。「醤油も長浜産で近所の鍋庄商店製。他所のでは、この味が出せません」
![](https://assets.st-note.com/img/1687746910224-31QQXWV9Gc.jpg?width=800)
![](https://assets.st-note.com/img/1687747205431-S4Tj8cetvJ.jpg?width=800)
ご主人の達也さんは、小浜市から届く浜焼を切り分け、こくがある醤油をベースに、2日間かけて煮込む。しっかり炊かれた鯖は口中でほろほろと崩れて骨まで食べられる。一般的な鯖の煮付けとは違って、旨みが深く濃く宿る味わい。そうめんにも鯖の風味がのって、絶妙の取り合わせだ。
![](https://assets.st-note.com/img/1687746933906-iY0X9GgmmU.jpg?width=800)
![](https://assets.st-note.com/img/1687746958258-s8v07civZk.jpg?width=800)
店によって作り方も味も違いがある。料理旅館「浜湖月」では、お昼に「焼鯖そうめん御膳」を提供。鯖は有馬山椒を加えた醤油タレで炊く。小鉢を邪魔しない上品ですっきりした味わいだ。女将の岸本裕子さんは彦根市出身。40年前に嫁いで初めて焼鯖そうめんを知って驚いたそうだ。「彦根にはない長浜の味」と語る。湖北の暮らしで培われた風土の味だ。
![](https://assets.st-note.com/img/1687746979440-EYvdGwcSjR.jpg?width=800)
ご当地INFORMATION
●長浜市のプロフィール
琵琶湖の北東に位置し、羽柴秀吉が初めて一国一城の主となった地として知られる。北陸道と中山道をつなぐ旧北国街道の宿場町として栄え、古い町並みを残す一角に飲食店や骨董店が連なる「黒壁スクエア」は人気の観光スポット。毎年春に行われる長浜曳山祭では、豪華な曳山(山車)が町中を巡行して賑わう
●問い合わせ先
翼果楼 ☎0749-63-3663
浜湖月 ☎0749-62-1111
文=片柳草生 写真=佐々木実佳
出典:ひととき2023年7月号
▼連載バックナンバーはこちら
よろしければサポートをお願いします。今後のコンテンツ作りに使わせていただきます。