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祈る人の心を汲んで、あったかい気持ちにさせてくださるのが仏像だと思うんです(俳優・紺野美沙子)

俳優の紺野美沙子さんが、弊社刊行の西山厚さんのご著書仏像に会う―53の仏像の写真と物語の書評をお寄せくださいましたので、ご紹介いたします。

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『仏像に会う』、西山厚先生の最新刊が出ましたね。仏像が好きなので、楽しみにページを繰ってみたら、私にとって思い出深い仏像がいくつも掲載されていました。

 まず鑑真和上坐像です。このお顔のアップの写真、とても印象的でしょう?

p60-61鑑真和上

仏像に会う―53の仏像の写真と物語』より

 私と著者の西山先生との最初のご縁は、神戸で行われた「唐招提寺フォーラム」のパネラーとして対談させていただいたことでした。そこで鑑真さんのことを深く知り、そのあと奈良国立博物館で行われた「鑑真和上展」で、この鑑真和上坐像を拝観したんです。細部の表現も見事で、まるでそこにおられるかのような、生身の鑑真さんを感じることができるお像です。この時は閉館間際に行ったのですが、お像が私を待っていてくれたような気持ちになりました。本書で写真を見たときに、その感動がよみがえりました。

 10年間にわたって全国を巡回したこの展覧会を拝見したとき、奈良国立博物館では、仏像一体一体に向き合って、慈しんでいると感じました。「展覧会」って、美術品として展示物を見せるというイメージがあったのですが、そうではなくて、祈りの対象であるということを大切にして展示がされていました。「あとがき」に、奈良国立博物館での仏像供養の写真が掲載されています。年4回の恒例の法要のほか、会期が始まる前にお坊さんをお呼びして、お祈りを捧げていただくのだとか。こうしたことからも、西山先生が仏像を単なる美術品と考えてはいらっしゃらないということが伝わってきますよね。

 それから、大好きな東大寺の釈迦誕生仏立像は、小さくてとても愛らしい仏像で、実は私のうちのリビングにはこのお像のレプリカがあるんですよ。東大寺のミュージアムショップにいったときに、この誕生仏が真っ先に迎えてくれて、心惹かれてそのままお連れして帰りました(笑)。本書には、横顔のアップも載っていますね。これは新鮮でした。肉眼での印象とはまた違いました。螺髪(らほつ)のこまかさ、微笑みの優しさ。親しみやすさがさらに増すような優しい雰囲気です。写真が掲載されていることで、知らなかった表情に気づきました。

p54-55誕生仏

仏像に会う―53の仏像の写真と物語』より

 仏像は、正面だけではなく横、後ろから拝観できるものもある。本書には釈迦誕生仏立像以外にも、背中や横からのアングルで撮られた仏像写真が掲載されていて、写真を多用した本ならではの気づきがありました。

 わけても衝撃的だったのは松尾寺の焼損仏(しょうそんぶつ)立像です。焼けてしまい、一目には仏像とわからないようなお姿になっても、人々の信仰を集めて大切にされてきたわけですよね。すごいことだと思います。そして、この仏像の影に仏様が宿っているという西山先生の文章に、仏像やそれを信じ伝えてきた人々に対する思いの深さを見てとりました。

p86-87焼損仏 松尾寺

仏像に会う―53の仏像の写真と物語』より

 印象深い仏像ばかりですが、もう一つだけ挙げると、室生寺(むろうじ)の釈迦如来坐像です。この仏像も私は好きで、胸におおらかな厚みがあって「だいじょうぶだよ」と言ってもらえているような気がします。『仏像に会う』にも釈迦如来の胸の部分だけの写真があって、きっと先生もこの胸の安心感がお好きなんじゃないかしら……。

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仏像に会う―53の仏像の写真と物語』より

 先生はよく、金子みすゞの詩「わたしがさびしいときに ほとけさまはさびしいの」を紹介されていますよね。祈る人の心を汲んで、あったかい気持ちにさせてくださるのが仏像だと思うんです。ここに紹介されているのは古くは飛鳥時代の仏像だから、1400年の時を経ているはずなのに、その長い時の隔たりを感じないのが不思議。親しみやすく、寄り添いたくなる仏像ばかりです。

 今年はコロナで仏像に会いに行けない人も多かったと思いますが、この本で優しい仏像にお会いして、心を重ねてみるとよいかもしれませんね。

談=紺野美沙子

紺野美沙子(こんの みさこ)
俳優・朗読座主宰。1980年、慶応義塾大学在学中にNHK連続テレビ小説「虹を織る」のヒロイン役でデビュー。「武田信玄」「あすか」など多数のドラマに出演。舞台「細雪」(原作・谷崎潤一郎)では三女・雪子役を好演。他に、「忠臣蔵」「日本の面影」(作:山田太一)など、硬軟を問わず意欲的に舞台に取り組んでいる。バラエティ番組にも度々出演し、飾らないトークで注目を集めている。1998年、国連開発計画親善大使の任命を受け、カンボジア・パレスチナ他、アジア・アフリカの各国を視察するなど、国際協力の分野でも活動中。著書に『ラララ親善大使』(小学館刊)がある。2010年秋から、「紺野美沙子の朗読座」を主宰。音楽や影絵や映像など、様々なジャンルのアートと朗読を組み合わせたパフォーマンスや、ドラマリーディングを全国各地で公演している。NHKFM「音楽遊覧飛行」案内役を担当。元祖スー女としても知られ大相撲有識者会議の一員である。2020年12月~2021年1月、東京・大阪・福岡で舞台『両国花錦闘士(りょうごくおしゃれりきし)』に出演。

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