【殿ヶ谷戸庭園】武蔵野の自然を残す別荘地の面影(東京都国分寺市)
「名勝」とは、日本における文化財の種類の一つ。本連載では国指定名勝の庭園、峡谷、海浜、瀑布などを、臨場感あふれる撮りおろし写真で紹介します。旅に出たような気分で、日本の美しい景勝地の数々をお楽しみください。(ひととき 2017年10月号「名勝アルバム」より)
中央線国分寺駅南口から徒歩二分。東京にいることを忘れるような景色が現れる。
東京都立殿ヶ谷戸(とのがやと)庭園は河岸段丘の国分寺崖線(がいせん)(通称ハケ)の南側に位置し、その高低差を活かして自然環境と見事に調和している。
南満州鉄道副総裁などを務めた江口定條(さだえ)が、大正時代初頭に「随冝園(ずいぎえん)」と名付けた別荘を構えたことに始まり、昭和4年(1929)に旧三菱財閥創設者・岩崎彌太郎の孫、岩崎彦彌太(ひこやた)が当地を買い取った。彦彌太は、別邸として和洋折衷建築の本館を建て替え、敷地北東に、崖線からの湧水を利用した次郎弁天池と、池を見下ろす数寄屋造り風の紅葉亭を建設するなどして、和洋折衷の回遊式林泉庭園を完成させた。
敷地南側より本館を望む。四季を通じ、数々の山野草や花木が迎えてくれる
昭和40年代に周辺地域の再開発が計画されたが、市民による保存運動により、東京都が購入。整備を経て、昭和54年に有料施設として公開された。
「武蔵野台地の植生が現代まで守られている貴重な場所。静かで豊かな時間を過ごせます」とボランティアガイドの林篤さん。
親しい友人の邸宅に招かれたような安らぎを覚える場所だ。
次郎弁天池から紅葉亭を見上げる。晩秋にはイロハモミジが見事な景観をつくる
中川道夫=写真
◉名勝指定:平成23年9月21日
東海道新幹線東京駅から中央線に乗り換え国分寺駅下車、徒歩約2分
国分寺市南町2丁目
[問]殿ヶ谷戸庭園サービスセンター ☎042-324-7991
[時間]9時〜17時(入園は16時30分まで)
[休]年末年始
[料金]一般150円
出典:ひととき2017年10月号
※この記事の内容は雑誌発売時のもので、現在とは異なる場合があります。詳細はお出かけの際、現地にお確かめください。
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