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【KIRIDAS】森林が96%を占める村で生まれる家具(奈良県十津川村)

日本全国の“地域の宝”を発掘する連載コーナー「地元にエール これ、いいね!」。地元の人々に長年愛されている食や、伝統的な技術を駆使して作られる美しい工芸品、現地に行かないと体験できないお祭など、心から「これ、いいね!」と思える魅力的なモノやコトを、それぞれの物語と共にご紹介します。(ひととき2019年2月号より)

 清々しい木の香に思わず深呼吸。山々を見渡す木工所に併設されたギャラリー兼カフェ「KIRIDAS TOTSUKAWA」は、床もテーブルも椅子も十津川村産の木材で、自然のぬくもりに満ちている。

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「KIRIDASオリジナル」のダイニングチェアとベンチは木の質感を生かす天然オイル仕上げ

「日本一広い村」十津川村は、面積の96パーセントが森林。KIRIDAS(=伐り出す)とは、十津川村の山から伐り出した木を使い十津川村で作る、オリジナル家具のブランド名でもある。

 隣接する工房では、3人の若い木工職人が「KIRIDASオリジナル」シリーズの家具や、オーダーメイド家具、小物を制作していた。

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(右から)職人の中山直規さん、村尾守さん、坂口明裕さん

 昨秋デビューした「グリッドシリーズ」のチェアとベンチは、矩形のフレームで構成されたすっきりしたフォルム。明るい色調のヒノキにラタンの組み合わせが軽やかだ。座ってみると座面のしなりが心地よく、背もたれの絶妙なカーブが優しく背中を支えてくれる。

 職人をまとめるのは、自身も木工家で十津川木工家具協議会事務局の中山直規さん。「自然を身近に感じられるような、シンプルな家具を作っていきたいですね」と語る。

 以前から林業活性化に熱心だった村が、本格的に森林再生に舵を切ったのは平成23年。紀伊半島大水害の被災がきっかけだった。以来、山を守り村を守るという原点に立ち返り、災害に強い健全な森づくりに取り組む。生産から加工・販売まで一貫して村内で行い、木材は枝の先まで徹底利用。

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工房で作業する村尾さん

 その実例を、子育て世代と高齢者が共生するモデルプロジェクト「高森のいえ」で見た。中庭を囲む住宅はすべて十津川村産の木材。共有スペースの壁や床、天井には杉の間伐材が使われている。木の節が水玉のようにリズミカルな模様を描く、モダンな空間だ。

 宿泊したホテルのロビーには、KIRIDASのソファがゆったりと置かれていた。村の公共施設にもKIRIDASの家具。森のいのちをつなぐサイクルが、日常にそっと寄り添っていた。

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ナチュラルなファブリックのソファ

宮下由美=文 阿部吉泰=写真

ご当地◉INFORMATION
●十津川村のプロフィール

奈良県の最南端に位置する十津川村の面積は東京23区や琵琶湖より広く、「日本一広い村」として知られる。
村一番の名所「谷瀬の吊り橋」は年間16万人が訪れる人気スポット。全国に先駆け「源泉かけ流し宣言」を実施、良質な天然高温泉が楽しめる。
「紀伊山地の霊場と参詣道」として世界文化遺産に登録された大峯奥駈道と熊野参詣道小辺路〈こへち〉が村内を通り、ウォーキングコースも設けられている。
●十津川村へのアクセス
新宮駅から奈良交通バスで約2時間、または近鉄大和八木駅から奈良交通バスで約3時間50分
●問い合わせ先
十津川村役場産業課
☎0746-62-0004
KIRIDAS TOTSUKAWA(十津川木工家具協議会)
☎0746-67-0123
https://kiridas.jp/

出典:ひととき2019年2月号
※この記事の内容は雑誌発売時のもので、現在とは異なる場合があります。詳細はお出かけの際、現地にお確かめください。


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