見出し画像

【無鄰菴庭園】山縣有朋と稀代の庭師が築いた名庭(京都市左京区)

「名勝」とは、日本における文化財の種類の一つ。本連載では国指定名勝の庭園、峡谷、海浜、瀑布などを、臨場感あふれる撮りおろし写真で紹介します。旅に出たような気分で、日本の美しい景勝地の数々をお楽しみください。(ひととき 2021年1月号「名勝アルバム」より)

 明治から大正にかけて活躍した政治家、山縣有朋(やまがたありとも)。無鄰菴(むりんあん)は1896年(明治29年)に造営された山縣の別荘で、母屋・洋館・茶室と庭園によって構成されている。作庭は “近代日本庭園の先駆者”とも呼ばれる庭師、7代目小川治兵衛(じへえ)が担った。

2101_名勝D01

「此庭園の主山(しゅざん)といふは喃(のう)、此前に青く聳(そび)えてゐる東山である」と山縣自身が語るように、この庭は東山を軸に造られている。治兵衛は地面の盛り上がり、景石、植栽を巧みに生かして、山縣が望む“東山を見るための庭”を築いた。池や岩を象徴的に配する枯山水とは異なる、琵琶湖疏水(そすい)の流れや里山のリアルな表現も見どころである。「冬は、庭園の秘密が現れる唯一の季節。木々と草花で隠れがちな庭園の最大の魅力、つまり高低差と石組みの構造が最もわかりやすくなります」と、無鄰菴を管理する植彌(うえや)加藤造園の山田咲さん。

 山縣の優れた美意識と治兵衛の確かな技術――幸福な関係が生んだ京の名庭である。

写真=打田浩一

◉名勝指定 1951年(昭和26年)6月9日
京都市左京区南禅寺草川町31 
☎075-771-3909 
9時〜17時(10月~3月)
9時~18時(4月~9月)
[料]600円(小学生未満は無料)
https://murin-an.jp/
南禅寺界隈別荘群の中で唯一、通年公開されている無鄰菴。洋館2階に山縣有朋と伊藤博文らが日露外交について話し合った(無鄰菴会議)部屋があり、当時の様子を今に伝える。

出典:ひととき2021年1月号
※この記事の内容は雑誌発売時のもので、現在とは異なる場合があります。詳細はお出かけの際、現地にお確かめください。




最後までお読みいただきありがとうございます。いただいたサポートは、ウェブマガジン「ほんのひととき」の運営のために大切に使わせていただきます。