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【霞間ヶ渓】災害との闘いが育んだ桜の名所(岐阜県揖斐郡池田町)

「名勝」とは、日本における文化財の種類の一つ。本連載では国指定名勝の庭園、峡谷、海浜、瀑布などを、臨場感あふれる撮りおろし写真で紹介します。旅に出たような気分で、日本の美しい景勝地の数々をお楽しみください。(ひととき 2018年4月号「名勝アルバム」より)

 霞間ヶ渓(かまがたに)を目指し宿を出たのは、朝まだきのこと。ようやく空が白み始めると、小さな山の斜面と谷川の堤に咲く桜花が、霞のごとく浮かびあがる。やわらかな春の陽射しが届く頃には、一帯が薄桃色に包まれた。

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 この地は古来、近隣の村々の入会地(いりあいち)として、燃料の薪や飼料・肥料用の草刈り、田畑の水源に利用されていたが、一方で、慶安3年(1650)の大山崩れをはじめ、幾度も水害をおこしてきた。そこで、乱伐を禁じ、堤防を築いて桜を植えたところ、次第に多品種の桜が自生するようになったという。

 そんな歴史を教えてくれたのは、池田町産業課の方山英樹(かたやまひでき)さん。

「シダレザクラ、エドヒガン、ソメイヨシノ、ヤマザクラ、オオヤマザクラなど開花の時期や色の異なる桜が次々と咲くので、長い間、さまざまな表情を楽しめます」と誇らしげだ。

 災害との闘いが育んだ花名所――。爛漫の佳景が秘める物語に、胸を打たれた。

佐藤佳穂=写真 平成29年4月10日撮影

◉名勝指定 昭和3年(1928)2月17日
☎0585-45-3111〔池田町産業課〕
岐阜県揖斐郡池田町藤代地内
https://www.town.gifu-ikeda.lg.jp/kankou/0000001605.html
池田山の東斜面から麓にかけて、約2キロの谷川沿いに8種1,500本の桜が群生。山桜に彼岸桜を交えた、多数の天然変種を含む桜の植生地として、名勝と同時に天然記念物に指定されており、「さくら名所100選」にも選定されている。例年、3月中旬より順次開花、3月下旬から4月上旬に見頃を迎える。

出典:ひととき2018年4月号
※この記事の内容は雑誌発売時のもので、現在とは異なる場合があります。詳細はお出かけの際、現地にお確かめください。

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