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【永保寺庭園】禅僧・夢窓国師の名庭を彩る錦の紅葉(岐阜県多治見市虎渓山町)

「名勝」とは、日本における文化財の種類の一つ。本連載では国指定名勝の庭園、峡谷、海浜、瀑布などを、臨場感あふれる撮りおろし写真で紹介します。旅に出たような気分で、日本の美しい景勝地の数々をお楽しみください。(ひととき 2018年11月号「名勝アルバム」より)

 凛とした早朝の秋の空気を全身に受けながら、ひと気の少ない臥龍池(がりゅういけ)の畔に立つ。荘重な国宝の観音堂と閑雅な無際橋(むさいばし)が、池に慎ましく映る。梵音(ぼんおん)の滝の音が響く。赤、黄、橙と、鮮やかに色づくもみじの木々。すべてが豊かに調和していた。

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 永保寺(えいほうじ)庭園は観音堂の前庭で、禅僧・夢窓国師の代表作のひとつだ。国師の庭は自然の地形と景観を巧みに活かし、禅の世界を表現した設計で知られる。無際橋は幾度か架け替えられ、土橋だったときもあるというが、庭園全体は往時の景観を保っている。

「朝一番に来ると、紅葉に加えて、静かな水面に映るお堂と橋が美しく、心が洗われるように感じます」と、永保寺事務局の虎山宗峰(とらやましゆうほう)さん。

 造園当時、永保寺周辺は「四隣(しりん)数里、人無き幽境」と言われたそうだ。その気配を今も色濃く残す紅葉の古刹で、しばし、穏やかな時の流れに身を任せた。

蛭子 真=写真

◉名勝指定 昭和44年(1969)4月12日
☎0572-22-0351 岐阜県多治見市虎渓山町1-40
[拝]5:00~17:00(名勝庭園内のみ)
https://tajimi-pr.jp/sight/eihouji
正和3年(1314)、夢窓国師が永保寺を開創し、寺域整備に際して造園された。当時の建物(観音堂と開山堂)と併せて残された、中世の庭園文化を今に伝える貴重な名勝。もみじの紅葉のほか、少し時期をずらして、樹齢700年のイチョウが黄金色に輝く様も華やか。

出典:ひととき2018年11月号
※この記事の内容は雑誌発売時のもので、現在とは異なる場合があります。詳細はお出かけの際、現地にお確かめください。


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