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【養翠園庭園】千本の松が見守る 徳川ゆかりの汐入の池(和歌山県和歌山市)

「名勝」とは、日本における文化財の種類の一つ。本連載では国指定名勝の庭園、峡谷、海浜、瀑布などを、臨場感あふれる撮りおろし写真で紹介します。旅に出たような気分で、日本の美しい景勝地の数々をお楽しみください。(ひととき 2020年12月号「名勝アルバム」より)

 四季を通じて青々とした葉をつける松は常磐木(ときわぎ)と呼ばれ、古来吉祥のシンボルとされてきた。その松を主体に植栽し、紀州藩第10代藩主の徳川治宝(はるとみ)が8年もの歳月をかけて造営したのが「養翠園(ようすいえん)」だ。隠居所の西浜御殿別邸として造られ、園名には公卿・三条公修(きんおさ)が「松の翠(みどり)を養う園」という意を込めた。

 海浜の風致を生かした汐入の池が珍しい当庭園。しかし海の景色は意図的に取り入れず、L字形の敷地の東側に位置する天神山や章魚頭姿山(たこずしやま)などの山並みを借景として、中国の西湖を模しているのが特徴だ。

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「その一方で、建物がある西側は曲線的な護岸の日本式手法で造られており、周遊しながら景色の変化を楽しめます」と園主の藤井清さん。約1100本ある松は、立華(りっか)すかしという手法で仕立てられた線の太い豪快な姿。暖かな季節にはあまり人目を引かない松だが、寒風吹きすさぶ季節にこそ、万古長青(ばんこちょうせい)の美しさが際立つようである。

佐藤佳穂=写真

◉名勝指定 1989年(平成元年)12月8日
和歌山県和歌山市西浜1164 
☎073-444-1430 
[時]9時〜17時 [料]大人600円ほか [休]無休
http://www2.odn.ne.jp/cap99810/
1826年(文政9年)に完成した池泉回遊式の大名庭園。園内には数寄屋造りの茶屋「養翠亭」や茶室「実際庵」、和歌山市指定文化財の「湊御殿」など貴重な遺構が保存されており、四季折々の花木が訪れる人々の心を和ませる。

出典:ひととき2020年12月号
※この記事の内容は雑誌発売時のもので、現在とは異なる場合があります。詳細はお出かけの際、現地にお確かめください。


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