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【髙梨氏庭園】江戸期以来の暮らしを今に伝える下総の名庭(千葉県野田市)

「名勝」とは、日本における文化財の種類の一つ。本連載では国指定名勝の庭園、峡谷、海浜、瀑布などを、臨場感あふれる撮りおろし写真で紹介します。旅に出たような気分で、日本の美しい景勝地の数々をお楽しみください。(ひととき 2019年10月号「名勝アルバム」より)

 江戸時代より関東の醤油醸造の拠点として知られる千葉県野田市。当地で名主を務めた髙梨氏は、寛文元年(1661)、19代兵左衛門(ひょうざえもん)の時代に屋敷内で醤油醸造を始めた。その後大正6年(1917)から職住分離が図られ、敷地内の居宅の整備が進められた。

 現在、屋敷と庭園は上花輪(かみはなわ)歴史館として一般公開。明和3年(1766)築の門長屋(もんながや)、文化3年(1806)改修の書院、昭和六年(1931)改築の瀟洒な洋間もある数寄屋造り棟などの居宅や、神楽殿や籾蔵(もみぐら)、稲荷神社など、各時代の様々な建物が見事な調和を見せている。

 副館長で30代当主夫人の髙梨節子さんは、「新旧を上手く取り入れて改修を行った、二十八代の美意識の結晶」と語る。

 自然を敬い、農作物と日々の無事を祈り、年中行事を大切にする設(しつら)いの邸内は隅々まで手入れが行き届いているが、そのさりげない雰囲気が何とも心地よい。

中川道夫=写真

◉名勝指定:平成13年(2001)8月13日 
*平成21年(2009)に追加指定
千葉県野田市 
[問]髙梨本家上花輪歴史館 ☎04-7122-2070
@TakanashiHonke
県内初の国指定名勝。約3千坪の敷地の北側には山に見立てた椨〈たぶ〉の大木、西側には屋敷林を配し、「北に山、西に森」という江戸期の屋敷建築の基本が見られる。展示棟では、生活・醤油醸造用具類、地方文書〈じかたもんじょ〉などを公開している。

出典:ひととき2019年10月号
※この記事の内容は雑誌発売時のもので、現在とは異なる場合があります。詳細はお出かけの際、現地にお確かめください。


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