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【佐久島アート・ピクニック】日常を忘れて大自然を満喫(愛知県西尾市一色町)

日本全国の“地域の宝”を発掘する連載コーナー「地元にエール これ、いいね!」。地元の人々に長年愛されている食や、伝統的な技術を駆使して作られる美しい工芸品、現地に行かないと体験できないお祭など、心から「これ、いいね!」と思える魅力的なモノやコトを、それぞれの物語と共にご紹介します。(ひととき 2018年10月号より)

 日没後の海岸にくっきりと浮かび上がる「イーストハウス」のシルエット。額縁のような矩形の(くけい)フレームの向こうで、残照を映す海が刻々とその色を変えていく。壮大な自然の動画を見ているようで、時を忘れ佇んだ。

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海辺に建つ白い東屋「イーストハウス」(南川祐輝=作)

「アートの島」として年々人気が高まっている佐久島。東地区のイーストハウスをはじめ、島内には22のアートスポットが点在している。海岸、畑、「三河湾の黒真珠」と呼ばれる美しい黒壁の集落の中……島を歩きながら出会うアートは、見るだけでなく登ったり、触れたり、覗いたり。潮風や光、木々の濃密な緑、穏やかな港の景色など、アートを通して島の豊かな自然が体感できるよう設計されている。

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潮風を感じながらのんびりくつろげる「おひるねハウス」(南川祐輝=作)

 散策の途中で、偶然アーティストの荒木由香里さんに出会った。作品のメンテナンスに訪れたという。海岸に打ち寄せられた小石や貝殻を散りばめた「星を想う場所」は、覗き込むと夜空に吸い込まれるよう。島は宝探しのような魅力に溢れていると、荒木さんは言う。

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「星を想う場所」と作者の荒木由香里さん

 人口流出が進む島に賑わいを取り戻そうと、アートによる島おこしが始まったのは1996年。自主活動組織「島を美しくつくる会」が中心となり、島外のボランティアや島の小中学校とも協働しながら海岸の整美や藻場(もば)の再生、黒壁集落の修復などさまざまな活動を行ってきた。「島が好きだから、皆で大切に育てていきたい」という鈴木喜代司会長の言葉には、島の未来を見守る温かさがにじむ。

 2001年からは新たに「三河・佐久島アートプラン21」事業がスタート。アートプロデューサーの内藤美和さんが参画し、島に来て体感してもらうアートを目指してきた。その成果が実り、今では年間約十万人が訪れるという。

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「カモメの駐車場」(木村崇人=作)

 佐久島への起点、一色港近くの観光案内所「佐久島ナビステーション」には2017年、23番目のアート「知識の蜂の巣」(長岡勉=作)が誕生した。迷宮のような空間に入り込んで郷土の文化に出会う、ユニークな作品だ。発見の予感に満ちた島への旅は、もうここから始まっている。

文=宮下由美 写真=佐々木実佳

ご当地◉INFORMATION
●佐久島のプロフィール

三河湾内の有人離島三島のうち、面積173ヘクタールと最も大きい佐久島は、縄文・弥生式土器片が出土し、古墳も残る歴史ある島。豊かな自然や昔ながらの集落風景、祭りなどの伝統が残っている。岩合光昭の初監督映画「ねことじいちゃん」(2019年公開)はこの島が舞台。通年プログラムの「佐久島アート・ピクニック」、「佐久島弘法巡り」のほか、毎年多くのアートイベントが開催されている。名物のタコや大アサリなど、新鮮なシーフードも人気。
●佐久島へのアクセス
一色港から高速船で佐久島西港まで約20分、佐久島東港まで約25分
●問い合わせ先
西尾市佐久島振興課 ☎0563-72-9607
一色港佐久島行船のりば ☎0563-72-8284
佐久島公式ホームページ https://sakushima.com/

出典:ひととき2018年10月号


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