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シンカンセンスゴイカタイアイス|柳家喬太郎の旅メシ道中記

当代一の落語家・柳家喬太郎師匠。お声がかかれば全国あちこち、笑いを届けに旅に出ます。旅の合間の楽しみは、こころに沁みる土地の味。大好きなあのメシ、もう一度食べたいあのメシ、今日もどこかで旅のメシ──。この連載「旅メシ道中記」では、喬太郎師匠の旅メシをご紹介します。

 すっごく硬い。カチンカチン。でも食べれば至福。東海道新幹線車内販売のアイスクリーム。

 大好きなんです。スプーンが刺さらないほど硬くてすぐに食べられないあのアイスが。なーんて言うと「喬太郎、連載してるからどうせヨイショだろ」と思われるかもしれませんが、そうじゃないのよ。だって、乗ったら必ずと言っていいほど食べてるからね。

 なぜあんなに硬いんですか? と尋ねてみれば、「濃厚さ」と「ねっとり食感」を出すために、乳脂肪分を高く、空気含有量を減らして密度を高めているからなんだそう。さらにドライアイスでキンキンに冷やして販売するから、「しばらく経ってからお召し上がりください」級の硬さになるわけです。アイスにホットコーヒーをかけて、溶かしながら食べるごつうもいるようですが、僕はひたすら待つ。15分間。スプーンがスッと入る。幸せな時間の到来です。

 バニラアイス1個340円って高いような気もするけど、その値打ちがあるおいしさだと思うし、僕にとっては旅の仕事のご褒美なんです。行きなら景気付けに、帰りなら自分へのねぎらいに食べる。けどね、都合いいタイミングでワゴンが来るとは限らないのがつらいところよ。名古屋で仕事があるとして、下りは熱海~豊橋間で食べられたらベスト。晴れた日で車窓から富士山も見えたら言うことなし。上りのデッドラインは熱海~小田原間。ここ過ぎたら東京着くまでに食べ終えられないからね!

バニラも大好きだけど、前に「みかん味」ってのがあったんです。これが驚くほどおいしくてねぇ、今でも忘れられません。ガキの頃よく食べたオレンジのシャーベットみたいなのを想像してたら、食べてビックリ、果実感に加えてしっかりミルク感があるではないですか! 衝撃のうまさ! 2、3度食べる機会に恵まれたけど、その後なくなって、バニラ以外は季節ごとに味が替わる*ことを知りました……。

*東海道新幹線では季節ごとに常時約3種類を販売 

 聞けば過去にマンゴー味があって、これもやはりシャーベットでなく乳脂肪分がリッチなアイスクリームにこだわったのだそう。この春のいちごもおいしかったけど、去年のピスタチオも絶品だったなぁ。次はどんな味が登場するのか楽しみ。だけど……みかん味がまた食べたい! 復刻してくれないかなぁ。お願い、ジェイアール東海パッセンジャーズさん! (談)

【シンカンセンスゴイカタイアイス】
正称スジャータスーパープレミアムアイスクリーム。名古屋製酪が新幹線車内販売用に開発し、32年前からバニラの販売を開始。バニラと抹茶は山陽新幹線・東北新幹線などでも販売。一部ジェイアール東海パッセンジャーズ(JRCP)オリジナル商品もある。
[販売箇所]
東海道新幹線「のぞみ」「ひかり」車内のほか、東海道新幹線主要駅の駅弁売店、東京駅のショップでは複数種類のアイスクリーム自動販売機、JRCPオンラインショップ*
*オンラインショップでは複数種類のアイスクリーム(セット商品もあり)を販売。ドライアイス付きで配送

談=柳家喬太郎 絵=大崎𠮷之

柳家喬太郎(やなぎや・きょうたろう)
落語家。1963年、東京都世田谷区生まれ。大学卒業後、書店勤務を経て89年に柳家さん喬に入門。2000年真打昇進。落語協会常任理事。ストロベリー・クッキー入り(オンラインショップ・自販機で販売)も大絶賛!

出典:ひととき2023年8月号

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