マガジンのカバー画像

終着駅に行ってきました

18
終着駅という響きに、わけもなく惹きつけられる。この先にはもう線路がない、という最果てのロマン。そして一抹の哀愁。そこには、どんな街が広がり、どんな人たちが息づいているのか。憧れで… もっと読む
運営しているクリエイター

2022年8月の記事一覧

息遣いが伝わる鉄道と町と、“頑張っている”人たち(阿下喜駅・三岐鉄道北勢線)|終着駅に行ってきました#13

「こんなに積もったの、半世紀以上ぶりなんですってよ」  風呂上りのミネラルウォーターを購入した僕に、レジの女性は、そう声をかけてきた。 「藤原の方では60cmも積もっているんですって」  ここは、三重県にある阿下喜駅。その斜向かいにある温泉に隣接した売店である。  窓越しに見える空は、痛いくらいに青かった。冬の透明な陽光が、雪を溶かして、軒先からぽたぽたと水滴が落ちている。朝一番に訪れた時は、建物へのアプローチも雪に覆われていたが、今は濡れた路面が姿を見せている。山間