それぞれの花火、台南・南鯤鯓代天府にて〜神々の宿る島|フォルモサ台湾ショートストーリー(栖来ひかり)
── 花火がつぎつぎとあがった。何か月も練習をしてきたショーがもうすぐ終わる。
ピアノとバイオリンの生演奏をかき消すような破裂音。南鯤鯓代天府の空いっぱいにひろがる花が金色や赤色に砕けちる。こんな真近に花火を感じるのは初めてだ。アヒルの塩漬け卵みたいなオレンジ色の大きな夕日が沈むころから、山門の左上に小さく輝きはじめた金星がぼくらを見守っている。ぼくたちの廟の神様は吳府千歲といって、唐の時代の官僚だったひと。ものすごく頭がよくて、星を読むのが上手だったらしい。
ぼくは台南