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地元にエール これ、いいね!

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日本全国の“地域の宝”を発掘する連載コーナー「地元にエール これ、いいね!」。地元の人々に長年愛されている食や、伝統的な技術を駆使して作られる美しい工芸品、現地に行かないと体験で…
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#この街がすき

【出雲の鍛冶しごと】「たたら」の伝統を今に伝える(島根県安来市)

 粘土で築いた炉に、砂鉄と木炭を交互にくべ、鞴で風を送り、高温で燃焼させる。炉の中で砂鉄は分解・還元され、鉄が生まれる。日本古来の「たたら製鉄」だ。  良質な砂鉄に恵まれた出雲地方では、1000年以上前から鉄づくりが行われてきた。その長い歴史は、たたら関連の貴重な資料や器具を展示する安来市の「和鋼博物館」で体感することができる。  産業としてのたたら製鉄は近代製鉄法に取って換わられ、100年ほど前に姿を消したが、今でも出雲伝統の鉄加工を継承する職人たちがいる。今回紹介する

【沼津のバー文化】都会のバーとは異なる別荘地らしい上質空間(静岡県沼津市) 

 沼津にはオーセンティックバーが多い。何故なのか。1967(昭和42)年創業のBAR Frankのオーナー相原勝さん曰く「沼津御用邸が建てられたことからもわかるように、ここは保養地としてすぐれた土地で、昔は『海のある軽井沢』なんていわれて、政財界の要人たちが別荘を建てたんです。旧国鉄の時代には東海道線の要所としても栄えていました」。別荘族の社交場としてバーが必要とされ、バー文化が醸成された側面があるのだろうと語る。 「バーテンダーは黒子。カウンターという舞台で、主役は一人一

1億年の浪漫に満ちた「海の神の使い」 日和佐のウミガメ(徳島県海部郡美波町)

 ウミガメの産卵地として知られる徳島県美波町日和佐地区の大浜海岸。ここは日本のウミガメ保全の発祥地でもある。始まりは1950(昭和25)年、呼びかけは地元の男子中学生だった。 「肉を削がれたウミガメの亡骸を、彼が海岸で見つけたんです。食糧難の時代でしたから、食用に捕獲されたのでしょう。そこで『こんな悲惨なことが二度と起きないように』と仲間を集めてウミガメの観察記録を始めたそうです」と田中宇輝さん。日本で唯一のウミガメ専門の博物館「日和佐うみがめ博物館カレッタ」の学芸員だ。

【うきはの麺】小麦ときれいな水に恵まれた麺の聖地・福岡県うきは市

 青々とした麦畑が広がる筑後平野。その東に位置するうきは市は、九州で「麺の聖地」と呼ばれている。小麦出荷量は全国2位、筑後川水系の豊富な地下水、麺の熟成や乾燥に適した寒暖差のある気候と、麺づくりにもってこいの土地なのだ。  製麺所を前身とする「麺屋こばやし」で、人気の「とまとラーメン」をいただく。鶏ガラベースにトマトの酸味と甘みが溶け込んだコクのあるスープがしなやかなストレート麺に絡み、麺そのものにもうまみが感じられる。 「スープには地元産の桃太郎トマト、麺には『ラー麦』