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故郷の桜を語る ≪さくら美譚 特別編≫

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ひととき2020年4月号の特集「古都、さくら美譚――奈良・京都」に≪特別編≫として収録されたkinki kidsの堂本剛さんと、女優の吉岡里帆さんのインタビューをまとめました。
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吉岡里帆「故郷の桜を語る」

 春は、大好きな季節です。気持ちがまっさらになって、自然と「何かを始めよう」と思い立つからです。桜の花の美しさに惹かれて、無意識のうちに空を見上げるからでしょうか。春の華やぎは、桜からの贈り物なのだと思います。  私が生まれ育った京都には、至る所に桜の名所があります。特に二条城のライトアップされた夜桜は素晴らしく、京都にいた頃は毎年必ず足を運んでいました。中でも心惹かれたのが牡丹桜。濃いピンク色の丸っこい花房が、夜空にポン、ポンと浮かび上がる様が可愛らしくて、他の桜にはない

堂本 剛「故郷の桜を語る」

 僕が生まれた奈良の家の前には、ちょっとした桜並木があって、幼い頃はその下を通って通学していました。でも、当時は桜の花にそれほど目を向けてはいなかったように思います。桜という花が、僕にとって特別な存在になったのは、ふるさとを離れて東京に出てきてから。4月生まれということもあり、いつしか春になると、家族への感謝の気持ちを桜の花に重ねるようになっていました。  母との忘れられない思い出があります。ある年の春、東京に来ていた母と一緒に、桜を見た時のこと。目の前でそっと母がポツリと