紀行文の名手・田山花袋が賛美した夏の嵐山と保津川下り|偉人たちの見た京都
今から110年ほど前の大正初期。独力で日本一周の旅行案内書を作ろうと考えた作家がいました。『蒲団』や『田舎教師』などの名作で文学史に名を残す、自然主義派の文豪・田山花袋です。
1871(明治4)年に群馬県館林に生まれた花袋は、小説家を志して上京。1891年に尾崎紅葉を訪ね、その門下生となります。英語を学びながら西欧文学の新潮流に触れるなか、国木田独歩や島崎藤村らとの交流を深め、次第に客観描写を重視した自然主義へと傾斜していきます。1907年に花袋が発表した『蒲団』は、