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イスタンブル便り

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25年以上トルコを生活・仕事の拠点としてきたジラルデッリ青木美由紀さんが、専門の美術史を通して、あるいはそれを離れたふとした日常から観察したトルコの魅力を切り取ります。人との関わ… もっと読む
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#建物

トルコから見るシルクロード(2)イスラーム・ホジャの夢(ヒヴァ)|イスタンブル便り

首都タシケントでの講演の翌々日、飛行機でヒヴァへ飛んだ。 ヒヴァはウズベキスタンの西端。海のない二重内陸国ウズベキスタンの、さらに奥まったところだ。こう言ってはなんだが、地の果てのような場所だ。そんなところに、なぜわざわざ行ったのか。 ここは、ヒヴァ・ハーン国という小さな国の首都だった。街そのものがそっくりそのまま、世界遺産である。日干し煉瓦で造られた独特の城壁に囲まれた「城内」は、ウズベキスタンのなかでも、最初に世界遺産に指定された、特別な場所なのだ。 空港から直行し

関東大震災100年と伊東忠太|イスタンブル便り

国境の町で、 一泊を余儀なくされた。イタリアの山の上の村からイスタンブルへ帰る自動車旅行の途上である。南伊の港からギリシャへフェリーで渡り、イグナツィア街道をひた走り、トルコへの国境を越えてしばらく行ったところで、車が突然故障したのだ。 翌朝。宿泊客のまばらな朝食室のテレビが、破壊された建物の映像を映し出した。まだ目覚めていなかった体の細胞が、一気に覚醒した。 トルコ南東部、シリア北西部を未曾有の大地震が襲ったのは、今年2月のことである。現時点で、死者数は5万余と言われて