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イスタンブル便り

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25年以上トルコを生活・仕事の拠点としてきたジラルデッリ青木美由紀さんが、専門の美術史を通して、あるいはそれを離れたふとした日常から観察したトルコの魅力を切り取ります。人との関わ… もっと読む
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#アンカラ

トプカプ宮殿宝物秘話:トルコ共和国建国100周年に寄せて|イスタンブル便り

今年2023年10月29日、まもなくトルコ共和国は建国100周年を迎える。100年前のこの日、アンカラのトルコ大国民議会は「共和国」の成立を宣言した。それとともに、法律を制定し、これを建国の日と定めた。 晴れがましいこの日は、600年以上続いたオスマン帝国に最後のとどめが刺された日でもある。トプカプ宮殿と、そこに安置された宝物は、その交代劇で人知れぬ、しかし大きな役割を演じた。あまり言及されることがないので、そのことを、この機会に書いておこうと思う。 * * * 「来週

アンカラ建築見学旅行|イスタンブル便り

「先生、みんなで一緒にアンカラに行きましょうよ。わたしに任せてください。書類全部用意しますから、先生はサインしてくださるだけでいいです」  イスタンブル工科大学で教えている近現代建築史の講座のアシスタント、キュブラがそんなことを言い出したのは、3月の半ばだったか、終わり頃だったか。コロナがそろそろ下火になった今学期、イスタンブル市内で初めて計画した見学会の帰り道だった。街で実際に三次元の建築を訪問し、見る喜びを、学生と共有した火照りがあった。 「えっ? そんなことができる