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イスタンブル便り

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25年以上トルコを生活・仕事の拠点としてきたジラルデッリ青木美由紀さんが、専門の美術史を通して、あるいはそれを離れたふとした日常から観察したトルコの魅力を切り取ります。人との関わ… もっと読む
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#イタリア

帰ってきたヤニグロ音楽祭と巨匠たちの真剣勝負|イスタンブル便り 特別編

来年もう一度、やれるのだろうか。 去年の夏、コロナ下の幸福な巡り合わせから実現した、世界的巨匠たちの音楽祭。州都の名前を、イタリア人でさえ知らないような地方、レストランもない小さな村。イタリアで最も観光化されていない(というのが唯一最大の特徴の)、モリーゼ州。そこが20世紀を代表するチェリストの一人、アントニオ・ヤニグロ(1918-1989)の父祖の地(そして、パオロ騎士の親戚である)という縁で、マエストロたちの個人的な力添えからはじまった。ジラルデッリ家が18世紀の歴史的

イタリアの山の上、人口1000人の村の夏|イスタンブル便り 特別編

朝の光の溢れるタイアフェッリ邸の鎧戸をひとつひとつ閉め、最後の鎧戸が閉まると、部屋は真っ暗になった。 今、ギリシャに向かう船の中でこの原稿を書いている。 夏季は特別編としてイタリアからお届けしている「イスタンブル便り」。 前回のトピック、ヤニグロ音楽祭の舞台となった山の上の小さな村、今朝あとにして来たモンターガノのことを書いてみたい。 かれこれ20年以上毎年、夏をこの村で過ごしている。 キリスト教の大祭、フェラゴスト(聖母被昇天祭)のある8月、村は祝祭の空気に満ち溢れる

ヤニグロ音楽祭~人口1000人の村にやってきたオーケストラとマエストロたち|イスタンブル便り 特別編

 夏到来である。  日本は例年に増して厳しい暑さが続いていると聞いている。みなさまの健康とご自愛をお祈りしたい。  ところで、わたしは現在この原稿を灼熱のローマで書いている。  ジラルデッリ家は毎年夏になると、イスタンブルからイタリアまで車で移動する。夏の大半はイタリアで過ごすのである。このフォトエッセイは「イスタンブル便り」だが、7月、8月は、お許しを得て舞台がイタリアに移る。 * * * 「マエストロ、イタリアの山の上の村で、チェリストのアントニオ・ヤニグロを記