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台北建築歴史探訪──日本が遺した建築遺産を歩く

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台湾在住作家である片倉佳史氏が、台北市内に残る日本統治時代の建築物を20年ほどかけて取材・撮影してきた渾身作『台北・歴史建築探訪』。このほど発刊される増補版では、コロナ禍でリノベ…
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#一度は行きたいあの場所

【OrigInn Space】歴史建築の味わいに浸れる個性派プチホテル|『増補版 台北・歴史建築探訪』より(8)

 大稲埕は茶葉や米、布地などの交易で栄え、今でもバロック風の装飾を正面上部に据えた商館建築が多く並んでいる。ここはその入口に当たる場所にあり、南京西路と迪化街の交差点に近い。6棟が連なっている大型建築で、地元では長らく「六館街」と呼ばれていたという。  外壁はすっきりしているが、さりげなく装飾が施されており、アクセントとなっている。竣工は1931(昭和6)年。所有者は台湾北部の大富豪であり、名家の誉れ高い林本源。現在は一部がリノベーション空間となっており、ショップやレストラ

【臺北賓館】重厚かつ優美な雰囲気をまとった総督の官邸|『増補版 台北・歴史建築探訪』より(1)

 この建物はかつて台湾総督の官邸だった。広大な敷地の中にあり、瀟洒な西洋建築がどっしりとした構えを見せている。3階建ての建物で、煉瓦と石材を混用して造られている。デザインはフランス風バロック様式と呼ばれるもので、荘重な印象が建物全体を包み込んでいる。左右が非対称で、曲線を多用して美しさを追求するスタイルだ。こういった様式は台湾では希有な例となっている。  初代の官邸は1901(明治34)年に落成していたが、白蟻の害に遭い、わずか10年あまりで改築されることとなった。増改築の