マガジンのカバー画像

へうへうとして水を味ふ日記

9
台湾と日本を行ったり来たりしている文筆家・栖来ひかりさんが、日本や台湾のさまざまな「水風景」を紹介する紀行エッセー。海、湖、河川、湧水に温泉から暗渠まで。
運営しているクリエイター

2024年3月の記事一覧

忘れられた時を求めて~東台湾臨海道路|へうへうとして水を味ふ日記

おおきな金盥を裏返したような楽器から、洞窟の内部を反響するような不思議なしらべがひびきわたり太平洋の潮騒と交じり合う。腰かけている石のまわりには、色とりどりの「卵石」(丸い石ころ)が積み重なっている。 花蓮の友人が連れてきてくれた風光明媚な台湾東海岸は「七星潭」の風を受けながら、瞑想をたのしむアクティビティー。ハンドパンを鳴らすインストラクターの声にあわせて目をゆっくり開けると、海岸線は奥の消失点に向かって優雅な孤を描き、そのカーブが抱く海はラピスラズリを溶かしたような深