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新MiUra風土記

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この連載では、40年以上、世界各地と日本で20世紀の歴史的事件の場所を歩いてきた写真家の中川道夫さんが、日本近代化の玄関口・三浦半島をめぐります。
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#三浦一族

水軍三浦党、久里浜から平作川を遡上する|新MiUra風土記

久里浜駅に下りたのは初めてかもしれない。この横須賀線の終着駅は三浦半島最南端のJR駅。特急が発着する少し離れた京急線久里浜駅が利便なので存在感は薄いが、駅舎は横須賀駅と同じ戦前からのいい雰囲気を残している。 ここからより古い幕末の久里浜へ向かおうと黒船のペリー公園へバスに乗った。 変わらぬペリーの上陸記念碑を眺めて、この浜辺でペリー艦隊の海軍兵が行進してる様子を思い浮かべた。演奏するアメリカ国歌は今の「星条旗」(*1)ではなく初代国歌「ヘイル コロンビア」と、愛国歌「ヤン

黒崎の鼻で、アイルランドと和田義盛を追憶する|新MiUra風土記

ときどきアイルランドの風景が思い浮かぶ。その草原や海岸が見たくなる。荒涼としたアランの島ならばなおいい。孤島の南岸は吹きつける風で、土も積もらない岩と礫の地。何も無いこと、虚無だけど豊かだと感じる光景に包まれたくなるのだ。 三浦半島にもそんな思いが叶う場所がある。黒崎の鼻から荒崎への海と崖。 京急線三崎口駅は、半島遊歩のおなじみの駅。いつもならここでバスを選ぶが、目指す岬には歩いて行く。「東京から電車で1時間あまりでアイルランドが味わえる」と同伴者がいればこう言いふくめよう