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新MiUra風土記

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この連載では、40年以上、世界各地と日本で20世紀の歴史的事件の場所を歩いてきた写真家の中川道夫さんが、日本近代化の玄関口・三浦半島をめぐります。
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2023年6月の記事一覧

三浦から島根へ、小泉八雲への半島紀聞|新MiUra風土記

明治23年[1890]、憧れの富士山を眺める外国人客を乗せたカナダ船アビシニア号は浦賀水道に入り、そのなかに小柄で隻眼の英国籍の紀行作家ラフカディオ・ハーンがいた。このときハーンはじぶんが日本人で小泉八雲になろうとは思いもしなかったろう。 「まるで何もかも小さな妖精の国のようだ」。上陸した初日本の横浜、鎌倉や江の島での見聞は彼を日本の歴史文化の淵に誘った。そして松江では出雲神話から民俗と怪奇譚に出会い、ハーン流の再話文学をつむいで日本人に遺した。 三浦半島から島根半島へと