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新MiUra風土記

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この連載では、40年以上、世界各地と日本で20世紀の歴史的事件の場所を歩いてきた写真家の中川道夫さんが、日本近代化の玄関口・三浦半島をめぐります。
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2022年9月の記事一覧

黒崎の鼻で、アイルランドと和田義盛を追憶する|新MiUra風土記

ときどきアイルランドの風景が思い浮かぶ。その草原や海岸が見たくなる。荒涼としたアランの島ならばなおいい。孤島の南岸は吹きつける風で、土も積もらない岩と礫の地。何も無いこと、虚無だけど豊かだと感じる光景に包まれたくなるのだ。 三浦半島にもそんな思いが叶う場所がある。黒崎の鼻から荒崎への海と崖。 京急線三崎口駅は、半島遊歩のおなじみの駅。いつもならここでバスを選ぶが、目指す岬には歩いて行く。「東京から電車で1時間あまりでアイルランドが味わえる」と同伴者がいればこう言いふくめよう