マガジンのカバー画像

新MiUra風土記

27
この連載では、40年以上、世界各地と日本で20世紀の歴史的事件の場所を歩いてきた写真家の中川道夫さんが、日本近代化の玄関口・三浦半島をめぐります。
運営しているクリエイター

2022年5月の記事一覧

天然うなぎのいた森 小網代|新MiUra風土記

 毎夏、相模の海の入江に奇跡と呼ばれる森を歩いてきた。  初めてその小網代の森を知ったのは、海岸線の魅力を知ってほしいという神奈川県主催の見学船に乗せてもらったとき。  このクルーズは、三浦の南端三崎港から城ヶ島を回遊して、相模湾の油壺沖へと向かうという。僕の思いは、この半島で鎌倉幕府を立ち上げて、ここ油壺の新井城で滅亡した三浦一族にあった。その落日を沖合から追想してみたかったのだ。  航海を終えて、小網代湾のシーボニアマリーナの桟橋に上がると、待っていた案内係が湾の奥

いざ鎌倉!消えた白山道をたどる|新MiUra風土記

 金沢八景駅の風通しがよくなってきた。  駅前は拡幅されて、京急本線と逗子線の駅は新交通システムの金沢シーサイドラインの駅舎と立体的に結ばれて、より利便になったものだ。  周辺の再開発も進み、復元工事がつづいた駅裏にある江戸期の茅葺屋根の旧木村家住宅と金沢八景権現山公園も完成して、この四月に公開されたばかり。この山上には平潟湾からの浜風も届いていた。  横浜市最南端の金沢区はかつて六浦荘と呼ばれた。  干拓された今の地形は、かつて内海、湾と入江と川に侵食された海岸線で