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そして旅へ

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小説家、エッセイスト、画家、音楽家、研究者、俳優、伝統文化の担い手など、各界でご活躍中の多彩な方々を筆者に迎え、「思い出の旅」や「旅の楽しさ・すばらしさ」についてご寄稿いただきま…
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記事一覧

パリ、軽やかに流れて 宇賀なつみ(フリーアナウンサー)

 パリに着いた途端、空が明るくなってきた。東京は汗ばむような暑さだったのに、肌寒くて驚い…

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日常の舞台を旅の中に 小川 哲(作家)

 デビュー二作目の『ゲームの王国』という小説を出版する直前、僕はハワイに滞在していた。一…

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少年の祖父に会いに行く 山脇りこ(料理家)

 夫から「岡山の院庄ってところに行かない?」と旅に誘われました。院庄? はて? 「おじい…

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台湾の地で鳥を愛でる 片倉佳史(台湾在住作家)

 台湾は世界に名だたる「鳥の楽園」である。現在、地球上には約1万種の鳥がいるとされる。新…

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旅の方法 大平一枝(作家・エッセイスト)

 仕事部屋のコピー機の上に、息子の就活用エントリーシートがあった。七年前のことだ。第一志…

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空海の見た蒼 安田 登(下掛宝生流能楽師)

 旅には列車を使うことが多い。それは途中下車ができるからだ。能は、旅人がその途次で古人の…

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リスボンで故郷を想う 川添 愛(言語学者、作家)

 遠藤周作が長崎を訪れたときにキリシタン禁教時代の踏み絵を見て、そこから小説『沈黙』の着想を得たのは有名な話だ。私は長崎の出身だが、地元で踏み絵を見たことはない。私が生まれて初めて見た踏み絵は、ポルトガルのリスボンにある美術館に展示されていたものだった。  リスボンに行ったのは、もう二十年近く前のことだ。空港からタクシーで市街地に入ると、壁がボロボロの建物が並び、なんだかとんでもないところに来てしまった気がした。街を歩いていてもけっこうゴミが目につき、病院の前を通りかかった

夜の温泉街の酒場にて パリッコ(酒場ライター、漫画家、イラストレーター)

 珍しく「温泉旅館に泊まって豪華夕食を堪能し、そのリポートを記事にまとめる」という夢のよ…

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汽車の思い出に浸る旅 野田隆(旅行作家)

 少し離れた木立の後ろで煙が上がり、汽笛とともに黒光りした列車が煙を吐いて驀進してくる。…

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ガウディの裏切り 宮沢 洋(画文家、BUNGA NET編集長)

 建築を見る旅の醍醐味は、予想を裏切られることだ。知っていたことの追認になってしまうのは…

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物語の種 千早茜(作家)

 職業小説家になって十五年、純粋な旅というものをほとんどしていないことに気づいた。家にい…

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小倉トーストと母 高橋久美子(作家、作詞家)

「名古屋でモーニングを食べてみたい」  母が久々の旅先に選んだのは名古屋だった。しかも、…

ネコの向こうで鳥が飛ぶ 川上和人(鳥類学者)

 「仕事で旅行できていいですね!」  私は島を調査地とする鳥類学者である。このため研究を…

読み場所探しの旅 堀井美香(フリーアナウンサー)

去年50歳にして会社を辞めた。フリーとなった自分に課したのは、面前で読み続けようということ。都心の大規模なホールでの朗読会をなんとかこなしながら、もう一つ、こちらはほぼ道楽ではあるが地方の小さな場所での「読み聞かせ」を続けている。 集まってくるのは、町の防災無線で読み聞かせのことを聞いてとか、たまたま会場の図書館に居合わせた子ども達。それでも小さな観客達は、見知らぬおばさんが読む話に目を輝かせてくれる。話に吸い込まれるようにこちらににじり寄ってくる様や、もっと読んでとせがむ