台湾の秋雨が囁く“忘れられた元日本兵”の記憶|白露~秋分|旅に効く、台湾ごよみ(23)
台風の季節である。
日本でかつてはこの頃の暴風雨を「野分け」といった。聞いただけで、地の肌がみえるほど草木が腰を曲げ嵐に耐える日本の里山が脳裏にうかび、上手い表現だなあと感心する。「猪のともに吹かるる野分かな」と芭蕉の句にあるように、イノシシでさえ吹き飛ばされそうな風である。
野分けが颱風の名で呼ばれるようになったのは、明治末期のこと。戦後に「台風」と改まったが、台湾では現在も「颱風」と書く。
颱風の語源には諸説あるが、ギリシャ神話のなかでゼウスに匹敵するほどの力を持つ