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月村了衛『香港警察東京分室』感想

やっと直木賞候補になりましたね!
『機龍警察』シリーズでこういう爆売れする賞を獲ってほしいが、香港警察も面白いのでぜひ獲ってください。
という願いを込め、面白さをアピールするノートです。
けっきょく徒然なる感想になっております。
途中で錯乱しましたが、そのままお出しします。
月村了衛の凄さ、桁が違うので分かってほしい(焦点の合わない眼)

上の画像は「みんなのギャラリー」から借りたものです。ありがとうございます。
読んだ人はこの写真の意味がわかるはずです。

致命的じゃないネタバレはしているので注意してください。

キャラクターが良い!

細かいあらすじは出版社サイトなどで読んでください。
ここではポイントだけ書きます。
分室(組対部特殊共助係)は日本側5人、香港側5人、計10人のメンバーで構成されています。

『香港警察東京分室』のキャラクター

キャラクターの描かれ方が月村節が効いており、面白いです。
イチオシはエレインと小岩井、嵯峨、ウォン隊長!山吹ももちろんだしハリエットもみんな良くてわからない!
となります。
エレインと小岩井はもっと話が続いてくれればすごいことになるんでしょ!?
続巻まだですか?
イヤ、機龍警察の続きを優先してくれー!
月村了衛今すぐ10人に増えて!

ところで虎居先輩はドラマの刑事コロンボの奥さんみたいな存在らしいですよ、良すぎない!?
ハァ〜すごいですね。
こりゃすごいわ……(何が?)
ところでシドニーが気になった人、『機龍警察 暗黒市場』読んだ方がいいですよ。
最近の月村了衛作品に誘導する記事書いてもいいかもしれないな、とふと思いました。
キャラについては作者がポッドキャストで語っておられるので聴いてください。
月村先生がこういうふうに嬉々として自作を語るのが好き。

7回と8回目が月村先生回です。

ここから狂信のギアを上げさせてもらいます……

P,211

211〜212ページ。
これを書くためのお話だったのかもしれません。
マックス・ラウ氏の供述のところです。(電子版の人すみません)

『香港警察東京分室』は香港のゴタゴタを東京に持ち込まれて困っちゃうなあ!という話ではない。
擬人化して説明するなら、日本の先をいく香港が振り向いている情景が見える。
または先をいく香港からこぼれ落ちた残りかすが、日本のことを見下ろしている、そんな感覚になりました。
いや、その道に香港はいないのかもしれない。
日本という国は(国体は)、知らない間に荒野に踏み込んでいるのかもしれない。
そんな肌感覚を映し出している話であると受け取りました。
これは、本を読んでほしいです。

直木賞は、社会問題に結びついた作品を好まないような勝手なイメージがあるのですが、佐藤究『テスカトリポカ』を受賞させた実績があるので、期待したいものです。
この話の突出した良い点はここですし、これが評価されなかったらノミネートされた意味がないのではないでしょうか。
これを理由に低評価をつけられたなら、その選考委員に幻滅してしまうかもしれません。
他の理由で受賞を逃しても私は悔しくない(悔しくなるはずですが)。
そのくらい、月村了衛の魂を感じた場面です。

面白いエンタメに作家の意思表明をぶち込める作家は現在何人いますか?
イケてる作家情報は常に募集中です。
渡辺あや脚本の「エルピス」が好きな人は月村了衛を読んでほしいです。
月村作品総体の映像化が「エルピス」だったので(錯乱した人間の譫言です)

9年後の日本

9年後、『香港警察東京分室』ってどう読まれてると思いますか?
こんなこと起きないよ、夢物語だったね!って笑い飛ばせられたらいいですね。
こんなことをジメジメ考えてしまったのは、陳浩基『13・67』を思い出したからです。
香港の警察官の話なのですが、2013年雨傘革命前夜までを語られます。
そして2014年に書かれた作者後書きには

我々はぐるりと回って、原点に戻ってきたのではないか?  そして、二〇一三年以降の香港が一九六七年以降の香港のように、一歩一歩復興に向けて、正しい道を歩んでいくか──それは、私にもわからない。  もっとわからないのは──強くて勇ましく、無私と正義の心で市民のため戦う警察のイメージがもう一度、復活することができるのか? 香港の子どもたちが香港警察を見て、またヒーローだと思ってくれるのか?  二〇一四年四月三十日

陳浩基『13・67』作者による後書きから

とあります。
どうですか、香港の強さ、明るさ、民主制を信じようとする希望を感じませんか。
2014年以降の香港を知っている私にとって、この文章は泣きたいくらい恐ろしく感じます。
2019年からのデモでは、香港の一部の警察官はデモ隊に攻撃をし、またデモ隊の一部から攻撃を受け、日常においても警察官達は命の危機を感じていた、という報道を見た記憶があります。
警察がまたヒーローになると良いな、どころではないように見えます。
違う本の宣伝になりつつありますか?
軌道修正します。

211ページのこととも繋がりますが、
「日本全然悪くならなかったじゃん!杞憂杞憂ガッハッハ!」
って9年後、なっていると思えますか?
私は全然思えません。
9年前に刊行した『13・67』を今読むような心境になってしまうのではないか?
そんな不安に襲われます。
なすすべがなく、日本は 「24年後の香港」に先んじてしまうのかもしれない。
怖いのは「なすすべがなく」の部分です。
とりあえず辛いお気持ちだけシェアさせていただきますわ。

関係ないですが、24年後の香港云々のくだり、エイドリアン・マッキンティのショーン・ダフィシリーズ(80年代北アイルランドの警察官の話。めちゃくちゃ面白い)のソフトランディングの話っぽい空気を感じました。(島でケイトに話されたやつ、何巻か忘れております)
これは謀略小説の空気感ですか?
リアリティとスケール感のバランス感覚が流石です月村先生!

これ、紹介っていう大層なものじゃなくて、徒然なる感想になっていますね。
紹介とかは出版社さんが頑張ってください。
私は「狂い」しか提供できません。


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