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【エッセイ風】わたしのテーマパーク&楽園~ありがとう三省堂書店神田本店

 三省堂書店の神田本店が建て替え工事のためにいったん閉店するというのに、あろうことか最後に訪問する機会を逃した。
 東京の近隣県出身のわたしからすれば、本好きの聖地・神田神保町までやっとこさ上京してきて、対峙した総本山みたいな本屋さん。
 初めて訪れたのは中学生の時だった。好きな作家の森絵都さんと、翻訳家の金原瑞人さんとの対談があるというので新聞経由で応募して、当選。三省堂神保町本店のニ階にあったカフェで、創作への思いや、ペンネームの由来などたのしいお話をたくさん聞くことができ、夢みたいな時間だった。

 一番好きな森絵都さんの小説「つきのふね」の単行本にサインをいただいた。たからもの!

 対談会を機に、金原さんの著作や翻訳本も意識して手に取るようになった。こちらのシェイクスピア物語集は、いまも家族のお気に入り。

 対談会の後は、書店の中を何時間もかけて回って、当時好きだった消しゴムはんこの本を購入。いまは廃刊になっているけれど思い出深い一冊。Z会の会員誌みたいなものに投書してもらった1000円分の図書カードを、この日のためにとってあったんだった。

 大学時代も何度も通い、本を購入するときもしないときもあったけれど、書棚のなかを歩き回ったりポップを眺めたりしているだけで読書や表現の意欲が湧くから楽しかった。そんな三省堂書店の本店が一時閉館するとニュースで知って、名残惜しく、写真を撮りに行った。「しおりをはさみます」というフレーズがテレビでも取り上げられていたから、記念として。せっかく神田に行ったのに、心行くまで時間つぶしができるところがなくなるなんて、残念だった。
 それから2週間くらいたって、先週末「三省堂書店本店最後の日」というニュースが流れた。あれ、そうすると写真を撮りに行った日はまだ営業中だったのか…。調べて行かなかったのが悪いんだけど、自分でも驚く勘違い。よく見ると写真でも入口が開いていて中にお客さんの姿も見えるのに、てっきり関係者だけだと思っていた。
 わたしと同じく、特別な思いを持った人が多い本屋さんだったんじゃないかな。本店の次の姿にも期待を込めて、感謝でおわります。ありがとう!

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