tipToe.楽曲解説Vol.14 – 特別じゃない私たちの物語
概要
・タイトル 特別じゃない私たちの物語
・ヨミ トクベツジャナイワタシタチノモノガタリ
・楽曲番号 20
・作詞 本間翔太
・作曲 瀬名航
・編曲 瀬名航
・振付 YUKO
・制作時期 3年生編「timetrip」
コンセプト
1年生「夢日和」、2年生「星降る夜、君とダンスを」に続く3年生を象徴する楽曲として制作してました。3年間で培った全てをここに集結させるつもりで作っています。tipToe.第1期の物語としても最後のエピソード。
2019年の前半は沢山曲を作っていて、Silent Sign、ないしょとーく、夏祭りの待ち合わせとこの曲はほぼ同期です。Letterも作っていましたが他の曲に比べて着手が遅かったので進捗が若干遅れてました。
この曲は楽曲コンセプトを決めた時点では何も決まっていなかったのですが、第1期最後のTOKYO IDOL FESTIVALでやれたらいいなぁと漠然と思ってました。願いが叶って夕暮れのSKY STAGEという最高の舞台で披露させていただけることになったのですが、TIFさんへの感謝の気持ちは当然として、それにしたってあのシチュエーションは色々と奇跡なのではと思います。確か1年生の最初の頃から「tipToe.をスカイステージで見たい」と言って下さる方が多くて、tipはメンバーも運営もアイドルの知識が薄いのでそれでSKY STAGEを知ってなんとなく目標してたんです。3年生はエンディングになりそうな場面が沢山ありましたが、あの日のステージもエンディングに相応しい場所だったと思います。あれ?コンセプトの話になってない気がしてきました。
なんにしろこの曲は1期のゴールでした。3年間の様々な出来事を経て、1期のメンバーの話も物語の主人公の話も一つの結末に辿り着くのです。
楽曲
第1期最後のアンセムとして作って欲しいというのと、サビが2段階存在し最後の最後に今までと全く違う怒涛の展開を経て真のサビに到達するということ以外、tipToe.のメインソングライター瀬名航くんにお任せして作っています。瀬名航節の総集編的な内容になっていて、転調に次ぐ転調で転調迷子になるレベル。瀬名君から教えてもらったいくつかのこだわりの中で面白いと思ったのは、リズム隊がメロは生演奏なのにサビで打ち込みに切り替わるところ。正直このやり方については音楽班の中でも議論を呼び、瀬名君の強いプッシュでそのままいくことになりました。
生バンドセットでライブをやる時はサビのタイミングでいきなり生楽器が抜けると違和感があるのと、演者が棒立ちになって絵的にシュール過ぎるので打ち込みに重ねて生で演奏してました。
大サビ直前の「今なら届きますか?」のところで一回オケを止めて、一言何か言ってから最後の展開に突入する演出をラストライブでやったのですが、その仕掛け自体は楽曲制作時点で既に用意してあっていつでもできるようになってました。一回限りでネタバレになってしまう大技なのでどこでやるか検討した結果、ラストライブまで温存することに。うまくいって本当によかった。
歌詞
高校卒業から1年半後が経った。
進学の為に東京に出て行った私も大学2年生になり一人暮らしにも都会の雰囲気にも慣れてきた。なかなか苦戦した期末テストを乗り越え、無事夏休みを迎えることに成功した私はこの休みを利用して実家の町に帰ることにした。高校最後の夏、あの夏祭りの会場で「また来年もここに来ようね」と交わしたあの約束はそれぞれの新生活が忙しく果たすことができなかった。それが今回の帰省でやっと当時の友達が全員揃うことになったのだから楽しみで仕方がない。2年生の末に家庭の事情で東京に行ってしまっていた友人とは去年東京で再会し、また時々遊びに行くようになったが、彼女も久しぶりに地元に帰ってくるらしい。今度は全員揃って夏祭りに行けそうでワクワクしている。
卒業した後はみんなバラバラになってしまって全員揃うのは卒業式の日以来だった。当時はずっと一緒にいた私たちだったけれど、それぞれの新しい生活があるからか時間が経つにつれてメッセンジャーアプリのトークグループも少し動きが鈍くなったような気がしていた。インスタでみんなの近況はなんとなく知っているが、ここ数日の浮き足だったトークグループで直接みんなから話を聞けるのはなかなかいいものだった。だからこそ今日が楽しみで、大学の近くにある雑貨屋でお土産にお揃いのリボンを買ってしまうぐらいだ。喜んでくれるだろうか。
なんとなく高校生の頃好きだった曲を聴きながら東京駅の新幹線乗り場に向かって歩いていたら、たった1年半前なのに随分と懐かしい気分になって昔のことを思い出してしまった。目の前のことでいっぱいだった私が昔の自分を振り返るなんて少しは大人になったのかもしれない。こんな日がくるとは思ってもいなかった。
地元近くの大きな駅で新幹線を降りて家の最寄駅までのローカル線に乗り換える。窓の外には数少ない地元の名物である花畑が見えてきて、少しだけ開いた窓からは懐かしい土の匂いがする。
次第に駅のホームが見えてくる。私は電車の扉の前に立っている。扉の向こうには、一人だったらきっと辿り着けなかった"いつかの未来"が待っている。久しぶりにみんなに会ったらお酒でも飲みながら寝るまでずっと話したいな。
私たちは特別じゃなかった、でも特別じゃなくたってよかった。
ほんのちょっと背伸びするだけで世界は変わる。
踏み出そう、新しい世界。
雑記
ダンスについては「daydream」楽曲の多くをご担当されグループに多大なる影響を与えて下さったYUKO先生にお願いする以外ありえないと思い、
アイドル振付業を休業されていたYUKO先生に「なんとかこの曲だけは…!」と延々に口説き続けお願いしてしまいました。「今なら届きますか?」のポーズは泣く、最高に泣く。
最後の大サビは、3年前の1期メンバー、これからの1期メンバー、これからtipToe.になるメンバー、応援して下ったファンの方、もう一度一緒に音楽やってくれた運営の仲間、高校生の頃の自分、どこかの教室の隅で腐ってる誰かへ書いたつもり。文字にすると臭くてちょっと恥ずかしくなってしまった。
青春とは、太陽が沈む直前のように美しく一瞬で、白昼夢のように幻のようで、時を超えて振り返った時に初めて気づくものだと思う。メンバーたちがいつか振り返った時に気づく大事な財産になってたらいいなぁ。
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