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110 マヨネーズとケチャップ

ケチャップはなぜか卑屈じゃないか?

 食卓にはマヨネーズとケチャップが並んでいる。冷蔵庫のドアポケットにいつもいるコンビだ。どっちがメインということもないのに、この頃、ケチャップは少し卑屈に見える。
「だってさ、マヨネーズはマヨラーとかファンがすごくいるのに、ケチャップにケチャラーはいないんだもん」
 ケチャップのファンは必ずいるはずだ。なぜなら、たとえばナポリタンは、ケチャップ感があった方が喜ばれる。オムライスでも仕上げはデミグラスソースをかけてもいいんだけども、真っ赤なケチャップの方がお似合いだ。チキンライスに至っては、ご飯のケチャップまぶしであり、ほぼケチャップを食べているのである。そのほか、ロールキャベツだの、ホットドッグ、アメリカンドッグ、フライドポテトなどにもケチャップは欠かせない。
「だけど、ケチャラーはいない」
 確かに。
「ヨゴレが落ちる洗剤の実験では、マヨネーズよりケチャップが使われる」
 確かに。
「ケチャップをくれと言ったら、『うちはそんな下品な店ではございません』と言われる」
 確かに。
 マヨネーズよりも、ケチャップは「下品な味」の代表格だろう。
「なんでもケチャップをかけて食べるなよ」とか言われてしまうだろう。
 一方、マヨネーズは、確かに、以前はケチャップと同じ「下品な味」の仲間だったはずなのに、どんどんその活躍の場を広げてしまった。最終兵器的な破壊力を持ちながらも、隠し味としても活躍する。主役もやれなくはない名脇役のような存在になっている。

想像上の夫婦

減っていく速さの違い

 正直、同じ量のマヨネーズとケチャップがあったとして、圧倒的にマヨネーズの減りの方が速い(それはまあ人によって違うだろうけど)。マヨネーズ3本消費する間にも、ケチャップはまだ1本目が底にけっこう残っている(個人差はある)。
 この結果、マヨネーズはつねに新しいものを消費しているのに、ケチャップは賞味期限のギリギリまで残っていてあまつさえ、「期限切れているけど、平気だよね」とか言われてしまう。
 ケチャップを隠し味に使う料理はない(いや、探せばあるかもしれないが)。下ごしらえにケチャップを使う料理はない(これは断言できそう)。サラダオイルのかわりにケチャップを使うことはない。「これさえあれば」の1本がケチャップであることは希である。無人島に1本だけ持っていけるとすれば、恐らく大半の人はマヨネーズを選ぶ(憶測にすぎないけど)。
 しかし。
 冷蔵庫のドアポケットでマヨネーズとケチャップはたいがい、仲よしである。ほかの連中がどんどん消えてなくなっていくのに、この2本は、比較的長期間、ドアポケットに居座っている。しかも、まるで世界が違うので、ケンカにはならない。
 なにしろ、オーロラソースは、マヨネーズとケチャップを合わせたものだ。しかもたいがいのオーロラソースは、マヨネーズとケチャップを1対1で合わせる。対等である。
 それでも、なんとなく、不遇なケチャップをマヨネーズが救っているような気もしてしまう(個人の感想です)。
 それでも、ケチャップが欲しいときは圧倒的にケチャップでなければならない。それだけは確かなのだ。
 個人的な体験だが、トンカツのような揚げ物にケチャップをつけると、けっこう楽しい。ある洋食屋さんでソースとケチャップが小皿でついてきて、なるほどと思ったものである。
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