376 最近見たテレビドラマ
『虎に翼』と『恋せぬふたり』
朝ドラ『虎に翼』は1話も欠かさず見た。そのことは、ここにすでに書いている。
NHKでは『虎に翼』の脚本家・吉田恵里香の過去作品『恋せぬふたり』を深夜に再放送していてそれもすべて見た。「アロマンティック・アセクシュアル」である主人公たち(岸井ゆきの、高橋一生)を軸とした基本的にはコメディである。いわゆる恋愛感情のない2人なのだが、このドラマそのものは通常のよくある職場恋愛もの、プラス三角関係もの、さらに家族ものの体裁なので、絵そのものはどこを切り取っても、ありふれた恋愛ドラマなのである。しかしタイトルどおり、この2人は恋をしない。実に見事な作品だったとしか良いようがない。向田邦子賞を受賞している。
これだけ褒めてしまって言うのもなんだけど、このドラマに出てくる人たちはまったく経済的に困っていない。意地悪な見方をすると、脳天気な人たちにも見えてしまう。もちろんドラマはそこがテーマではないから描かないんだということはわかるけれども。
このドラマのおかげで、ドラマではないが大好きな『家、ついて行ってイイですか?』を見ていても、ありふれた家族、夫婦、恋人のように見えても、それぞれ実はぜんぜん違うんじゃないか、と考えるようになった。「みんなちがって、みんないい」(金子みすゞ)と言いつつも、現実はステレオタイプで見ていることが多い。これは大いに反省すべきだろう。
そして最近、うちから出ない娘(40歳過ぎました)、隣のおにいさん、さらに犬友の人のところもまた出ていかない息子がいると聞き、この状況をステレオタイプで当てはめてはいけないなと自戒している。似た現象でも、それぞれに事情は違う。決め付けてはいけない。
癒しを求めるドラマたち『ギークス 〜警察署の変人たち〜』『GO HOME~警視庁身元不明人相談室~』『錦糸町パラダイス~渋谷から一本~』
3つもまとめちゃいけないけど。みなサブタイトルが長いね。
『GO HOME~警視庁身元不明人相談室~』についてはこちらに的確なnoteがあったので、ご紹介します。
このドラマについては以上で言い尽くされているけれど、刑事もの風な体裁でミステリーの仕立てでありながらもメインは「癒し」にあるドラマだから、終盤の割と大がかりなドラマについても、こちらの想像しがちな方向へは行かないのである。
それでも、女性2人のバディものとしてちゃんと楽しめる内容になっていた。
『ギークス 〜警察署の変人たち〜』は、松岡茉優、田中みな実、滝沢カレンの3人組が女子会のような中華屋での飲み食いの間に事件を解決してしまう的なミステリーのようでいて、それなりに意外なドラマも盛り込んでいる。方向感が定まらず見ている側は「あれ、あれ」と思ってしまうこともあったものの、これまた「癒し」を求めて見るドラマの位置づけになっているようでXなどではその系統の声が多数あった。見る側がどれだけ殺伐としているのか、と思うけど。とにかく、肝心な場面で拳銃は撃たないのである。そこに象徴されるように、それなりに派手な事件を地味に解決していくけれど、主眼は「ほっこり」にあったりするから、かえって難しくなるね。
以前に書いたけど、いまでは画面の向こうではなく、こっちがドラマなので大変なのである。物価高、税金、社会保険料、クマが出る、サルが出る、地震、津波、台風、ゲリラ豪雨、強盗、あおり運転などなど、大変なことばかり日々直面している。時々刻々と主人公になっていく人たちが大勢いるので、ドラマはとても難しい状況にあると言えそう。そこにコンプライアンスだのスポンサーの意向まで入ってきたら、おかしくなるよね。
『錦糸町パラダイス~渋谷から一本~』は、どうもよくわからないままに終わっていったんだけど(そこそこの回数はやったよね)、柄本時生は出演しているが企画、原案にも関わっている。掃除屋を舞台にしている。映画『PERFECT DAYS』を見て、そこにも柄本時生は出ていたんだけど、もしかするとこの映画にインスパイアされたのかな、と思う。「渋谷から一本」の意味はそれかな、とか。ともかくここも家族や街、現代の風潮などが盛り込まれているものの、見所がいまいちよくわからなかった。ただこれまた「癒し」テーマだとすれば、こういうのもあるのかな、と自分を納得させることはできそうだ。
まだ終わっていないドラマ『ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!』はまたしても本田博太郎の快演に支えられつつあるけれど、楽しみにしている。北京原人でもなんでもこなすこの大俳優は、とにかくあなどれないのである。もちろん、このドラマはそこが見所ではないとは思うけれども。
ドラマ『私の死体を探してください。』は、見始めたので最後までみちゃおうかな。現状、この先にそれほど楽しみがあるとは思えないものの。
ドラマ『シュガードッグライフ』は料理と同性愛もの。ドラマ『毒恋~毒もすぎれば恋となる~』は同性愛ものだがややミステリアス。この系統のドラマたちも、やっぱりそこになにかしらの「癒し」が求められている気がする。
これだけ現実の厳しさに直面している私たちにとってのエンタメとはなにか。いま問われているんだろうな、とか思っちゃう。
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