見出し画像

「軽トラとチェーンソーで晩酌を!」ー恵那中野方(3)

Vol 50  日本 山間地  涵養林保護のボランティア

前の2回で紹介した農泊「銀もくせい」は、岐阜県恵那市中野方町にあります。
中野方の住民は、先祖代々林業を生業とし、後世のために木を植えてきた山林と農地を持ち、周囲の山々は鬱蒼としたヒノキやスギの森に覆われています。

輸入材が日本の木材市場を席巻した1970年代から、日本の山林は無価値となり、伐採のプロの姿が消え、かつて人々が山で生計を立ていた時代は終わりました。
間伐が行われていたはずの森林は、何年も放置されたまま荒れ、いつ大雨で崩れるかわからない状態です。

「手入れはしたいけれど…伐っても山に放っておくしかないから…」と、山主さんたちが諦めるしかありませんでした。

日本全国で森林の放棄が深刻な問題となっているため、各地の自治体は民間の森林保全活動を促進するための支援策をとっており、「木の駅プロジェクト」は近年広く推進されている事業です。

恵那市公式HPより

木の駅プロジェクト

運営方式:不揃いの林地残材や間伐材を相場(1t2000~3000円)より少し高い価格(1t4000~6000円)で買い取ります。市場価格より高い部分は自治体が負担します。つまり、森の守るための民間活動を支援する補助金です。

木材の購入代金は地元の商店でしか流通しない特別な通貨「モリ券」で支払い、地元に経済的な潤いを与える仕組みです。このプロジェクトの狙いは、森林整備と地域経済を良い循環に導くことです。

森林保全と地域循環型経済活性化のためのこの施策は、大規模な工場を必要とせず、どこでも展開できる形で、日本中の森林地帯に徐々に浸透しつつあります。

森と人が元気を取り戻すために

2009年、電気工事店を営む鈴村今衛さん(農泊「銀もくせい」のご主人)は、地元住民の有志を募り、余暇を利用して間伐を行う自主的なグループ「杣組」を結成し、専門家を招いて伐採の知識や技術をレクチャーしてもらいました。

「軽トラとチェーンソーで晩酌」を合言葉に、「杣組」の活動が本格的に始まってから、周辺の森林の間伐が環境と地域経済における意義を地元の行政に訴え、行政からの理解と補助金支援を得ました。

杣組は、その補助金で伐採道具や機材、木をウィンチ付の運搬車などを購入し、地元や近隣の市から間伐活動のボランティアを募ります。 年間集まった間伐活動の20~30人は、杣組のメンバーの指導のもとで、木を伐採し、木材を山から運び出します。

2009年12月、杣組と行政、木材購入する企業、社会貢献する企業、地元店が一体となる「木の駅」が設立されました。

この仕組みでは、地方自治体が財政的な補助の一部を提供します。例えば、恵那市中野方の杣組は伐採した木材を木の駅まで運ぶと、1トンあたり6,000円が支払われます。このうち3,000円は購入会社が負担し、残りの3,000円は行政が補助します(市と県がそれぞれ1,500円ずつ負担)。

中野方 木の駅仕組み

杣組の活動方式:
1)地元と外部のだれでも、杣組のメンバーの指導で活動に参加できます。
2)山で伐採された木は木の駅に運ばれ、「モリ券」と交換されます。
3)森林伐採愛好家のだれもが、軽トラックやチェンソー、特殊装備などを借りることができ、伐採作業中に仲間を作ることもできます。

ある名古屋大学教授が森の間伐に参加した後手にしたモリ券

木の駅の活動で、参加者たちは森に入り、一日汗を流した後は、「モリ券 」を使って地元のレストランで仲間と酒を酌み交わし、語り合う…これが伐採愛好家たちの楽しみであり、友情であり、喜びなのです!
木の駅活動は彼らのサードプレイスです!

これは中野方町で始まった社会実験です。 中野方の「木の駅」プロジェクトが始まってから、森には人の営みの音が響き始め、木々や草むらには次第に太陽の光が差し込むようになりました。

間伐前の森
杣組間伐活動
間伐後の森

鈴村今衛さんはこう話しました:

地元の問題は自分たちの力でやります。行政が対応できない問題は自分たちで工夫して努力します。行政は地域にとって意義のあることに支援や援助をしてくれます。
私達は頂いた補助金を貯めて間伐ための機材や資材を買うことで、規模のある持続可能な活動ができました。 他地域は自治体からの補助金をその都度山主に配り、やりたい活動のための資金がなかったため、私達のように活動ができない地域が少なくないのです。

杣組の活動には、恵那市や近隣の都会の森林伐採愛好家が集まってきます。地元の人々とともに、自分たちの好きなことをするのです。

文/图:欧陽蔚怡
森林作業の挿絵引用先:水源の森 | NPO法人 恵那市坂折棚田保存会 (sakaori-tanada.com)

本文の中国語バージョン


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?