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中国とマカオが進める一島二制度とは【マカオ横琴開発区計画】

はじめに

成立の背景:マカオ-澳門の成長の限界?

新しい概念:広がる特区-横琴区の開発

中国唯一の地理的特性:香港-マカオ-中国の結節点

横琴が生み出す価値観と産業網

結びに

はじめに

中国では特別行政区として独自の法的地位と立場の下、成長と発展を遂げた香港、マカオ(以下漢字名の澳門で記載)。香港および澳門特別行政区以外では、経済特区として各種の優遇政策を適用される深圳市や珠海市など、中国では地方に権限を委譲するという取り組みが数多くなされてきました。

多くの成功を遂げてきた特別行政区+経済特区という取り組みですが、今新しい挑戦が進みつつあります。特別行政区である澳門市の拡大と経済特区である珠海市を融合させた新しい開発区【横琴開発計画】が着実に成長を遂げているのです。

(広東省大湾区に生まれつつある横琴開発区。その全貌とは)

成立の背景:マカオ-澳門の成長の限界?

横琴開発区の成立には隣の澳門が大きくかかわっております。ご存じの通り澳門は中国で唯一ギャンブルが公認されている地域であり、ポルトガルがマカオを植民地統治している時期からカジノ産業は重要な位置づけを果たしておりました。

(マカオにおけるカジノ産業は、ライセンス制になっており、2000年代以降中国大陸からの観光客受け入れにより、成長期を新たに迎えた)

マカオにおけるカジノ産業は政府歳入の50%以上を占めております。関連する産業-宿泊業や飲食業を含めればまさしくマカオ経済の柱です。またマカオ政府はその潤沢な歳入を市民へ還元していました。毎年日本円で約14万円の支給、さらに医療費や学費の一部-全額免除は、手厚い社会保障といえます。

(澳門経済の屋台骨ともいえる、カジノ-レジャー産業)

その一方で、特定産業への過剰な依存や新規産業の発展が問題視されていました。また開発を進めようにも開発できる余剰な土地や資金が足りないという課題を抱えているのです。

新しい概念:広がる特区-横琴区の開発

澳門の新しい後背地ともいえる地域、新規産業を生みだす開発区、横琴開発区が09年から提唱されました。

横琴の多くの部分は埋め立てや灌漑などの、人工的な処理がすでに施されております。その結果、澳門の陸地面積の3倍にあたる106平方キロメートルがが横琴開発区の面積となっております。

(科学技術区、金融区、レジャー住居区の3地区に分けられている)

横琴開発区と澳門本土は川一本の距離でしかなく、また北には中国珠海市の市街地と隣接する地理関係にあります。珠海側との出入りには制限ありませんが、特別区である澳門との間にはイミグレーションが設けられています。

(写真手前が横琴側で、川を挟んだ対岸、写真右側が澳門にあたる)

澳門側の取り組みとして特筆に値するのが、澳門大学のキャンパスがすでに横琴に設置されていることです。このキャンパスは澳門側にあるキャンパスの20倍にもなります。特筆すべきはキャンパス内は澳門側の行政法が施行され、出入りにイミグレーションが不要なことです。

(医療関係の研究が、澳門大学横琴キャンパスとして期待されている機能である)

中国唯一の地理的特性:香港-マカオ-中国の結節点

また横琴は香港側にとっても利点があります。世界最長の橋である、港珠澳大橋-Hong Kong-Zhuhai-Macao Bridgeが開通したことにより、横琴と香港の移動が容易になりました。香港企業や香港人材にとっての活躍の機会創出が期待されています。珠海経済開発区と香港-澳門の特別行政区が交わる稀有な地理環境といえるでしょう。

(香港側から4時間以上かかっていた澳門と珠海は現在車で30分で移動できるようになった)

横琴が生み出す価値観と産業網

ではどのような価値観を、横琴は創出することが出来るのでしょうか?横琴で進められているのは、先端医療を生かした医療サービス産業、香港を補完しマカオの行政法を活用する金融産業、さらに澳門住民へより良い生活環境を提供するために住宅インフラの開発です。

(医療産業基地が手前に控える一方で、奥には金融街が生まれつつある)

大資本を意識した開発のみならず、多くのベンチャー企業を支えるためのインフラ作りも進みつつあります。起業家のためのオフィススペースや開発及び研究拠点が建造されつつあり、香港人及び澳門人への新しいビジネスチャンスを生み出しました。

(横琴創意創業產業基地と、後ろに見えるのは住宅地)

結びに
2009年から10年間で、横琴の域内GDPは毎年60%の成長と、3500社が拠点を構えるようになりました。現在の常駐人口は1万人足らずですが、185億人民元(2800億円)の域内GDPを生み出すに至りました。

大湾区の新たな息吹として、私たちも注視しつづけるべきでしょう。

参考及び引用元資料

https://www.plataformamedia.com/2019/05/03/%E6%A9%AB%E7%90%B4%E6%BA%96%E5%82%99%E7%99%BC%E5%B1%95%E5%9C%8B%E9%9A%9B%E6%97%85%E9%81%8A/?lang=zh-hant

https://www.qianzhan.com/analyst/detail/220/191225-9d291f4e.html




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