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深圳に生まれたマンハッタン島【前海金融特区】!

はじめに

前海区‐深圳前海蛇口实验**区とは **

中華圏の金融中核を目指して

香港と深圳前海の共存進化

大湾区内での競争

結びに

はじめに

中国改革開放政策の先陣を切り、現在はイノベーションを日々生み出しつつある深圳市。中国が誇る1千万人都市ですが、その歴史は常に変革の歴史であったといえます。広東省の一漁村から、香港企業の工業地帯、電子産業の集積地、中国のシリコンバレーと目まぐるしい変化を40年間で遂げてまいりました。

私たちが目の当たりにしつつある深圳市で今生まれつつある新たな風景。それは金融都市を目指した新たな取り組み「前海金融特区」計画です。今回は中国のマンハッタン島を目指した同計画について、お話しします。

(ドローンによる前海区の全景写真。全く新しい深圳が生まれつつある)

前海区‐深圳前海蛇口实验**区とは **

前海区はは深圳市南山区の隣に位置しておりで、深圳の沿岸地域にあたります。海を挟んで非常に近い距離に香港北部が望むことができ、西に行くと深圳市と世界を結ぶ深圳宝安空港まで車で10分ほどで移動することもできます。広東省を東西に分ける珠江の東の玄関口にあたる地域は、沿岸交通の要所となることが予想されています。

(香港‐深圳‐東莞の3都市を結ぶ、沿岸地域に位置している)

(従来の中国の都市開発とは異なり、深圳市という大都市の再開発計画といえる)

18平方キロメートルほどの前海地区ですが、居住人口が50万人、労働人口で70万人を地区内で目標として掲げており、急ピッチで開発が進みつつあります。その開発ぶりを視察するために、習近平国家主席も同地を訪れました。

(開発費用としてすでに兆を超える規模の額が動きつつある)

中国のマンハッタン、つまりは新たな金融都市を目指す前海では金融業という産業を柱に、国際物流業の発達、人材開発を目標とした高度な教育事業の育成を目指しております。

前海での企業誘致政策や優遇政策の効果はすさまじいものとなり、同区が成立した直後には入居可能なオフィス数が250室にもかかわらず、2万社が会社設立申請書を提出しました。

(3つのビジネスエリアごとに、重点産業が異なっている)

中華圏の金融中核を目指して

さて従来中華圏の金融中核としては上海、そして香港が重要な役割を担っていました。基本的には上海が中国国内ひいては中華圏内の資金や投資の集積と分配を担う国内金融ハブです。

一方の香港が中華圏外の資金や投資、つまりは欧州‐米国やアジア圏全域の金融と中華圏内の金融を結ぶ国際金融ハブとしての役割を果たしています。

(東京、ロンドン、ニューヨークと並ぶ国際金融ハブ‐香港)

前海では【香港の金融機能を補完する】、【大湾区の金融能力の強化】を目的に金融部門における規制緩和を進めています。実例としては【香港地区と同様の金融政策】、さらには香港地区の金融人材の招聘や企業誘致、さらには各種税制優遇政策です。

中国では個人所得税及び法人税が高いことが知られています。これに対し、前海では法人税及び所得税の最高税率を引き上げることを政策として進めており、他地区では40%を超える税率が前海では15‐16%まで引き下げられています。

(製造業から始まった深圳市は今金融産業へと進化を図りつつある)

香港と深圳前海の共存進化

金融都市である香港と、深圳前海は一見対立関係にあるといえます。ですが香港と前海は共存関係を目指しているのです。

代表例が、【深港青年夢工場‐Shenzhen-Hong Kong Youth Innovation and Entrepreneur Hub】です。この施設は前海内に建てられた香港人起業家や香港企業のためのイノベーション基地、スタートアップ支援施設です。

(同施設は複合施設として、住居や研究棟、さらには美術館をはじめとするコミュニテイスペースを備える)

香港でのスタートアップや新産業の多くは高騰するオフィススペースや、各種産業資材の欠如という問題を抱えております。香港の優秀な人材に起業機会やビジネスチャンスを分かち合うという目的のもと、深港青年夢工場は深圳市と香港市の両政府が運営しております。

(香港市内と前海を直接結ぶシャトルバスも運行されており、香港島か1時間で移動することも可能)

大湾区内での競争

深圳市をはじめとする中国の大都市は、新産業の育成や各地区ごとの強みを生かした成長を目指しております。大湾区という中国内での地域統合が進む中でも、都市間の健全な競争や発展がカギとなってくるでしょう。

(前海で開催された大湾区協力会議)

結びに

日本で深圳研究やイノベーション理解が進む半面、地政学的な意味合いや都市に対する研究が不十分だと言わざるを得ないと思います。日本社会において、より深い中国リテラシーが高くなる日がくるきっかけに、本記事がつながれば幸いです。

筆者連絡先
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