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台湾と中国大陸を陸路でつなぐ!【台湾海峡通道-Taiwan Strait Tunnel Project】

はじめに

【台湾海峡通道-Taiwan Strait Tunnel Project】とは

台湾-中国本土の密接な関係

超巨大建設計画の過去事例

結びに


はじめに

中国福建省の対岸に位置する台湾。海を挟んで向かい合った地理関係の両者ですが、古来より台湾-中国本土は密接な関係にあり、今後もますます両者の関係性は重要になっていくでしょう。

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(日本とも中国本土とも、密接な関係を持つ台湾島)

関係性が深まる中で、海をまたいだ超巨大建設計画が議論されつつあります。今回は【台湾海峡通道-Taiwan Strait Tunnel Project】についてお話しさせていただきます。

【台湾海峡通道-Taiwan Strait Tunnel Project】とは

台湾島と中国本土、特に対岸の福建省の距離は実は非常に近いといえます。両者の間には台湾海峡が存在しますが、台湾海峡は平均で180Kmの距離しかありません。

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(東京を中心に、180Kmの距離を現した地図。東京から福島県、静岡県までの距離でしかない)

この180kmの距離を埋めるために、中国本土と台湾島を直接陸路で結びつける超巨大工事計画、これが【台湾海峡通道-Taiwan Strait Tunnel Project】です。

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(中国本土政府の、建設計画の予定図。複数ある候補の中から、3つの候補に絞り込まれつつある)

同計画自体は1940年代から提唱されていましたが、技術面での課題や建設費用の問題、連結後の社会全体への好影響が期待できないことから長く机上の空論とされておりました。                      

しかし2000年代以降に入ってからの中国本土の経済発展と、台湾島の交流密接化に伴い再度の検討が始まりつつあります。

3路線の内1路線までの絞り込みが必要で、いずれの路線も人口島、海底トンネル、海上橋、さらには高速鉄道をはじめとする鉄道路線、複数の交通手段による連結を予定されています。

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(日本にも関門海峡大橋などがある。しかし台湾海峡の場合、その距離は約120倍になる予定)

3路線はいずれも120㎞から150㎞前後の長さを予定しており、総工費は4000~5000億人民元(5.6兆円から7兆円)を見積もっております。中国の国家プロジェクトにおいても、注目に値する投資額です。

台湾海峡通道は台湾海峡のみにとどまりません。同計画の最終目標としては、中国全土の大都市から台湾まで直接移動できる交通網を作り上げることです。

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(中国全土のの高速鉄道網と連結することで、台湾島への速やかな移動が可能になる。仮称として京台高鉄と呼ばれている)

簡単に3つの路線についてお話させていただきます。

まずは北線。これは中国の福州市と台湾島の新竹市を結ぶ路線であり、124㎞と3路線で最短です。また地震が比較的少ない、もっとも可能性が高い路線です。

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(台湾の新竹市にはハイテク企業が集中しており、台湾の高度産業の開発地でもある)

中線は中国本土の泉州市と台湾の彰化県を結ぶ路線です。比較的水深の浅い路線であり、技術的な課題が少ないとされています。

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(20世紀初頭の泉州市。同市は海上交易でも知られており、海のシルクロードでも重要な役割を果たした)

最後の南線。中国本土の厦門市(アモイ市)と台湾の金門諸島を経由したのちに台湾嘉義県へ到着する路線です。しかし路線距離が比較的長いのと、地震多発地域であることから、実現性は低いといわれています。

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(風光明媚な海岸と、福建省で最も経済規模の大きい厦門市)

台湾-中国本土の密接な関係

台湾島と中国本土は古来より密接な関係にあります。三国志の時代には呉の孫権が台湾一帯へ開拓団を派遣しております。その後も明王朝の鄭和の台湾島入植に伴い本省人(早期の台湾へ移住した漢民族)、第二次大戦後の蒋介石に率いられた外省人(比較的後期の台湾移住して漢民族)など、中国本土からに多くの人間を受け入れてきました。

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(台湾島への入植団を率いた鄭成功。漢民族の父を持つが、母は日本人で長崎で生誕し、中国で艦隊を率いていた)

特に近年の中国の発展に伴い、双方向での行き来は重要になりました。台湾島へ嫁いだ中国本土出身、台湾から中国へ企業進出を行った台湾企業、中国で活躍する台湾出身の人材など多岐にわたります。

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(中国本土特に広東省深圳で、iPhoneなどの通信機器の製造を請け負う鸿海-FOXCONN社も台湾発の企業である)

中国本土政府も、台湾出身者に関して労働許可証(いわゆる労働ビザ)や大学の学位などの認定を行っており、人材-企業両面において優遇政策と誘致政策を行っております。

近年では台湾人の他地域での活躍が目立ちつつあります。しかし中国本土で働く台湾人は2019年末で約40万人となっており、海外地域で働く台湾人材の内6割前後が中国で活躍する計算になっております。

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(中国北京市における、台湾企業優遇政策の実例)

経済的にも人的に交流が深まってきたので、台湾海峡通道も注目されてきたといえます。

超巨大建設計画の過去事例

100㎞を超える超巨大プロジェクトについて、多くの方は計画の実現性に疑問視をされているでしょう。しかしすでに中国ではすでに多くの巨大プロジェクトを実現しています。

港珠澳大橋-Hong Kong–Zhuhai–Macau Bridge などが実例として挙げられます。同橋は広東省の珠海とマカオ、さらに香港を結びつける橋であり、長さは52㎞になっております。

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(現代世界の新七不思議とイギリスをはじめ各国で取り上げられた工事)

港珠澳大橋によって、エンターテイメント産業のマカオと、国際貿易の香港、工業能力に優れた珠海市及び広東省の西岸が連結されました。結果として同地域を内包する大湾区は、経済および地域統合を前進させてることになりました。

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(珠江の東岸経済と西岸経済を一体化させることで、珠江デルタは40年以来の相互成長がすすめられた)

台湾海峡通道-Taiwan Strait Tunnel Projectは、過去の事例を有効活用できるのではないでしょうか?

結びに
台湾海峡をつなぐ同計画は、まだまだ課題が残っております。中国本土政府と台湾島政府の合意形成はもとより、費用面、技術面などの討議は避けて通れません。

とてつもない規模をもつ計画が、どのように進められていくか個人としても楽しみにさせていただきます。

参考資料および画像元

http://www.xinhuanet.com/2019-10/13/c_1125099448.htm  

筆者連絡先
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