出会い系

そそり立つ 大きな波が向かってくるのを
(他の人はサーフィンをするというのに)
つぶさに厳密に見て、そして全体を隈なく把握して
動けなくなって
粉々になって  死ぬ
それが私なのだと、友人が教えれくれた

私はいつも 他の人が波に乗ってすり抜けて行くのを
その白い線を眺めている


豪華に外資IT企業のクリームを塗って
ガサツなスポンジに 
たった一層、普通の苺が挟まって
言葉はどれも8杯のハイボールと同じくらいに乱暴
私も同じ大学の出身だから知っているのよ
キャンパスの7割、〈たったの一層〉族は出世組なの

丁寧な和菓子のように言葉を編み上げて
地に足をつけて闘っていた
密な餡を死守して
一点を一様にただ見つめて
私のカオスを受けつけなかった
その整頓は その脚本は
一つの視点を守らなかったら
崩れ去ってしまうんだろう

"メル=ポン"と六法
隠れ家的なウイスキー
私なんて入る隙のない緻密なテクスチャー
私なんて入る隙のない
高価で濃厚
立派で上品
深くて高潔
散らかった私はストリートの味がする
そんな自分が大好きだ
"メル=ポン"は世界共通語


その後で、ミルフィーユ族の人に初めて会った
オンラインじゃない 〈弱い紐帯〉経由で
「あ、この人の構造、私わかるわ」とすぐに悟ったんだ

私のミルフィーユは1万2千層
その人は 1万9千層だったから
波のすべてを眺める粒子も7千くらい細かくて
私が見渡す世界は その観察のなかにすっぽり収まる

降参する
ありがたいと思う
安心する
身を預ける
粒子の細かい、その広い差分に

波を一部始終見ているのに
どうして私のように 溺れたりしないのかしらん
毎回骨を砕くことしか出来ない私に
ちっとも、踊り方を 教えてくれない




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