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【シン・柔道整復学 奏論】講義5.細胞の核

さて、第4回の講義では本当に軽く細胞の構造についてお話ししました。

私は前置きが長くなってしまうクセが昔からありまして、教員をやっていた時代には教科書の話をせずに自分の臨床経験の話だけで90分が終わったなんてこともありました。

それじゃいかんと思いましたので、今日はサクッと本題に入りたいと思います。

「サクッ」といえば唐揚げなんですが、唐揚げをサクッと揚げるには実はコツがあります。

これは油の温度です。

油の温度を約170度に保つことで衣がサクッと仕上がると言われております。

ここで重要なのが「保つ」という点です。

唐揚げではもちろん味付けして衣を振った鶏肉を油に入れていくわけですが、一定の温度の油に対してそれよりも温度の低い鶏肉を入れることで必ず油の温度が下がってしまうのです。

そのため、鶏肉を一度にたくさん入れないことが重要になってきます。

温度の変化を最小限にして、油の温度が一定に保たれるようにします。

そうすることで「サクッ」とした唐揚げを作ることがで………。

いかん!!!!

てことで、本題に入りますね。

核の中には

さて、唐揚げの油の温度を「保つ」という話をしてしまいましたが、実はDNAも保っているんです。

何を保っているかって、「遺伝情報」です。

どこに腕を生やすかとか、骨の形態をどうするとか、胃をどういう構造にするとか、目の色を茶色にするかとか、そういった情報を全て持っています。

DNAにはゲノムがあるのですが(※)、驚くべきことに、橈骨の細胞も足のゆびの遺伝情報を持っていますし、眼球の細胞にも胃の遺伝情報があります。

全ての細胞に体全体のゲノムが記されているのです。

(※DNAというのは構造物を指し、ゲノムというのは遺伝情報全てという大雑把な物を指します。)

そして、DNAは細胞核に存在します。

この図の真ん中にある球体が細胞核ですよね。二重の膜に囲まれています。

その周りはウォールシーナ、ウォールローゼ、ウォールマリア(※)のように膜の構造物が取り囲んでいます。これは核の周りを取り囲む粗面小胞体という構造物です。

(※参考文献『進撃の巨人』)

細胞の中でも核をクローズアップして見ていきましょう。

核をクローズアップして描いた細胞の模式図

核膜は二重膜と言いましたが、実はその外側の膜は粗面小胞体(リボソームがくっ付いている膜)と連続していまして、それに伴い核膜孔複合体という穴が空いています。

そして、ラミンというタンパク質によって核ラミナという骨格が形成されて、それが核の形を作ります。

核質(上図だと真ん中の薄い青で塗られた領域)の中央には核小体と呼ばれるものが描いてありますが、これは何かが集まっているだけで細胞小器官ではありません。

ホットケーキミックスが溶けきれずにダマになっているかのようなものだと思ってください。

DNAのダマです。

この核質の中全体に、クロマチン(タンパク質にDNAが巻き付いたもの)が広がっています。

クロマチンの構造

「クロマチンってなに?!」と思った方が多いと思いますが、順を追って説明しますので安心してください。

まずは皆さん大好きなDNAから話は始まります。

DNA(Deoxyribonucleic Acid,デオキシリボ核酸)は鎖状のヒモのようなものです。

そのヒモは伸ばすと細胞の直径の10万倍、約2mという驚異的な長さを誇ります。

細胞の中にあなたの身長よりも長いヒモが格納されているんです。

ここでDNAの構造について見ていきましょう。

「大腸菌のプラスミドDNAの周波数変調原子間力顕微鏡(FM-AFM)像」(※)こちらより転載

これは米国化学会誌「ACS Nano」(2013年2月号) に掲載されて、雑誌の表紙にもなった画像です。

(※)周波数変調原子間力顕微鏡(FM-AFM)は、表面の原子や分子の構造を高い解像度で観察するための一種の顕微鏡技術です。FM-AFMは、原子間力顕微鏡(AFM)の一種であり、表面のトポグラフィ(地形)や物質の性質を非常に詳細に観察することが可能です。

1928年にワトソンとクリックが「DNAは二重らせん構造でごわす」と発表してから、現代ではその構造の表面の撮影に成功していると考えると、なんとも感慨深いですね。

DNAももちろん、分子で出来上がっていますよ。

右の図は分子構造を示していますが、これは今は深く考えなくてもいいでしょう。

ただ、T(チミン)とA(アデニン)、G(グアニン)とC(シトシン)がいつもペアでくっついているとういうのは押さえておきましょう。

さらにいうと、それらが水素結合でくっついている。

水素結合は、結合様式の中でも弱い結合です。

第2回の講義で化学結合縫いついてはお話ししました。

そうやってくっつくことで、左側の鎖と右側の鎖が繋がって、さらにそれが捻じねてDNAを形作っているわけです。

DNAの収納方法

さっきも「伸ばすと」と言いましたが、縮められてコンパクトに核内に収納されています。

そんなこと聞いたら、どうやって格納されているのか知りたくなりますよね。

結論から言うと、DNAはヒストン(histone)というタンパク質に巻き付いています。

このDNAとヒストンのまとまりをヌクレオソームと言います。

「ヌクレオソーム」の語源は、ラテン語の「nucleus(核)」とギリシャ語の「soma(体)」から来ています。

ヌクレオソームは、ヒストンと呼ばれるタンパク質が8個で構成されています。

ヌクレオソームは、その中心に2対の4種類のヒストン(H2A、H2B、H3、H4)が存在し、

このヒストンオクタマー(ヒストン8個の複合体)にDNAが巻き付いている構造がヌクレオソームです。

この画像をご覧ください。

引用元はこちら

第5回にしてやっと分子生物学っぽくなってきましたね。笑

この画像はクライオ電子顕微鏡構造といったCG画像ですが、非常にわかりやすいです。

Aの図は同じ物を角度を変えて見ています。

フレンチクルーラーみたいですが、フレンチクルーラーの真ん中に色分けされた2対の4種類のヒストン(H2A、H2B、H3、H4)があって、灰色のクルーラーの部分が巻き付いているDNAです。

そしてこのヌクレオソームがいっぱい連なったものが、クロマチンです。

「クロマチン」の語源は、ギリシャ語の「chroma(色)」と「-in(接尾辞)」からきています。この用語は、細胞核内で見かける際に染色されているように見えるため、「クロマチン」という名前が付けられました。

小さい世界から大きい世界へ描いた図

このように、DNAがヒストンに巻き付いてヌクレオソームを形成し、それがさらに連なってクロマチンとなる、という流れです。

染色体はアルファベットのXのように描かれていますが、これは細胞分裂時期に光学顕微鏡で見られる凝縮された形であって、普段は解けて核内に溶けているようにして光学顕微鏡でもその姿はみえません。

さて、核内のDNAの姿がわかってきましたでしょうか。

このDNAという設計図を元にタンパク質合成されます。

さて、次回はもう少し小さい世界でDNAを見ていきましょう。

↓第6回の講義はこちら


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