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OL コンサイス


24歳になったころ、婦人欄担当になった加賀さんから「OLのともだちってたくさんいる?」と聞かれた。

中高大女子校だったので、同級生は大多数がまだOLだった。

そういう意味のことを答えると、加賀さんは、彼女たちに取材してOLのいまの流行りでコラムが作れないかな、という。


わたしは彼女たちの内輪の言葉を見出しに立てて本文でエピソードを書いたらいいと思う、と提案。

そのままOLの流行語辞典を連載することになった。

タイトルは「OL コンサイス」と案を出し、加賀さんが決めてくれた。


それから、中高大のともだちに電話を掛け始める。

想像した通り、彼女たちはローカルな言葉を作っていた。

でも、それを特別なことだと思っていないので、最初はみんな「わたしのところは普通の会社だからなんにもないの、ごめんね」という。

そうなんだ、と返しつつ、少しずつ聞いていくと、そんなことがほんとに?というエピソードや、ユニークな造語が出てくる。


あいにく、もう二つしか覚えていないのだが(自分で作っていないからか薄情気味)。

それは「カプセル」と「ベルサッサ」。


「カプセル」は読んで字のごとく、カプセルに入ったかのように職場で自分の殻に閉じこもり、必要最小限の仕事だけしている状態。

繁忙期や上司や先輩の干渉がうるさいとき、ほっといてください、とはいえないので、自分をカプセル内に隔離するというわけ。


「ベルサッサ」もそのまま、就業時間のベルが鳴ったら(実際はベルではなかったかも知れないが)さっさと帰るという意味。


時はまた36年めぐって、いまは娘がOLをしているが、メンタリティは当時の彼女たちとほとんど変わらないように感じる。

さすが平成生まれらしく、洗練されてはいるが。


OL コンサイスの連載は半年ほど続いた。

読者からの投稿もあり「週刊朝日」にはちょっと珍しく若い女性に読まれたコラムになったと思う。


4年後、わたしは機会を得て、OLに取材したエッセイの本を出版することになる。

このコラムでの経験を生かせたのはありがたいことだった。


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