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緒方孝市 元監督のこと。

2022年10月7日、広島東洋カープの新監督に新井貴浩氏の就任が発表されました。このところ明るい話題の少なかったカープにとって、久々の盛り上がるニュース。全国のカープファン、特に広島の街は大きく沸いたことでしょう。
そんなタイミングで、note初投稿、そもそもROM専としてアカウントを作成しただけの私が、あえて緒方孝市元監督についてひっそりと書きたいと思います。
(余談ですが、10月7日は緒方氏が「前」監督から「元」監督になった日でもあります。)


少年時代の私にとって、スーパーヒーローはウルトラマンでもスーパー戦隊でも仮面ライダーでもなく、緒方選手でした。
野球を観始めた当時、毎年優勝争いを繰り広げるカープでレギュラーを張って不動の盗塁王、リーグきってのスピードスターでホームランも打てる。さらに顔まで格好いい。まさにあこがれの存在でした。

しかし、それからほどなくしてカープは低迷期に突入。チームの顔というべき選手たちが、取得したFA権を行使して「優勝を目指せるチームに」と、次々に移籍していきました。そんな中、愚直にカープ一筋を貫いた緒方選手は、私にとって唯一無二のヒーローのまま、2009年に現役を終えました。

引退後はコーチを歴任する中、2012年~2013年頃からでしょうか、自然と「次期監督は緒方が既定路線」という雰囲気が、ファンの間にも出てきました。しかし私は、緒方コーチに監督になってほしいと思ったことは一度もありませんでした。

それはなぜか。監督というのはチーム勝敗の責任を背負い、矢面に立たされる存在である。それもありましたが、一番の理由は監督をしたら「あがり」であることでした。
おそらく5年前後であろう監督生活を終えれば、そのあとはチームを去ることになります。何らかの形でチームに残ったとしてもユニフォーム姿は見納めるになるでしょう。それよりも、たとえば高信二・現二軍監督のように、コーチングスタッフとして長くカープのユニフォームを着ていてほしい。それが当時の私の願いでした。

そんな私の願いもむなしく(?)、2014年オフ、当時の野村謙二郎監督の後を受ける形で緒方コーチは監督に就任しました。


715試合 398勝303敗14分 勝率.568 優勝3回


堂々たる成績と言っていいでしょう。緒方監督の5年間は本当にいろんなことがありましたが、概してとても幸せな時間でした。
ファンになって20年以上、夢にまで見た念願の優勝。そして今でこそ当然のように語られるものの、以前はほとんどのカープファンが夢想だにしなかったであろうリーグ三連覇という球団史上初の快挙。これらを他の誰でもない緒方監督の下で観ることのできたのは最上の喜びでした。

そして2019年10月、緒方監督はユニフォームを脱ぎました。感謝、安堵、脱力、喪失、無念…このときの気持ちを一言で表すことはとてもできませんが、この時から、私にとっては初めてとなる「緒方がいないカープ」を応援する日々が始まったのでした。

これまでにない気楽さと少しの物足りなさを感じながらカープの試合を見つめる日々の傍ら、監督を退いた緒方氏が「監督候補」として取り沙汰されたことがこれまでに3度ありました。

1回目は東京オリンピックの直後、稲葉篤紀監督の後任となる侍ジャパン監督候補としての報道(2021年8月9日スポーツ報知

2回目は阪神タイガース・矢野燿大監督の後任候補としてのうわさ(報道ではなく、主にネットを中心にファンの間でうわさされたもの)

そして3回目、カープ佐々岡真司監督の後任として新井氏と共に有力候補としての報道(2022年10月3日サンケイスポーツ同10月6日RONSPO ほか)

いずれの場合も、私の心境は非常に複雑でした。当然ながらユニフォーム姿はまた見たい。しかし、本当にこのタイミングがベストなのか、そのユニフォームの色でいいのか、もう少し休んだほうがいいのではないか…。
既にユニフォームを脱ぎ、当時と状況は違うとはいえ、以前カープの監督候補として名前が挙がっていたころと同様、私は「監督になってほしいとは思わない」と「思っていると思っていました」。

しかし今回、新井貴浩監督決定の報道を観た瞬間…というよりは、次期監督が緒方氏でないと分かった瞬間、自分でも驚くほど落胆していました。
思い返すと、侍ジャパンの後任候補の報道のときも、阪神の次期監督では?とまことしやかに囁かれていたときも、そして今回も「いやいやいや、さすがにないだろう」と思いながらも、その実、心のどこかでそれが現実となることを願って、いろんな情報を生き生きと調べている自分がいたことに気付いたのです。

「監督になってほしいとは思わない」と思っていたというのは、自分の大きな思い違いだったのです。

冒頭でも述べた通り、新井監督の誕生に広島の街は大いに沸いたことでしょう。指導者経験が皆無な点に不安は残りますが、反面、フレッシュであるからこそ沈滞ムードを打破する可能性があるとも思います。絶大な人気と人望を武器に、4年連続Bクラスからの巻き返しに大いに期待したいところです。

と同時に、今後またいつか「緒方監督」報道が出たときには、それがどんなタイミングであろうと、どんなチームであろうと、「緒方の監督姿がまた見たい!」と堂々と叫ぼう。そう思った今回の新監督誕生劇なのでした。

(なおここで挙げた3つの「監督候補」の話はすべて、報道や噂によるもので緒方氏自身は監督再登板への意欲をご自身で語っているわけではないことを付け加えておきます。)



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