エメリさんにきまったよ。

なんと、驚いた。

アルテタさんが来るのを両腕を広げて待つ姿勢をとったところだったのに。

驚きはしたけど、ガッカリな決断でもない。

エメリ監督には、じつは愛着がある。

彼は10年ほど前にスペイン一部のバレンシアというチームの監督をつとめており、そのバレンシアというチームは僕が応援しているもう一つのクラブである。

エメリ監督は、そのバレンシアを率いて安定した成績(3位とか3位とか3位とか)を残してくれた。

当時のリーガ・エスパニョーラというのは、レアル・マドリーとバルセロナの超2強時代であり、それ以外のチームは「オトラ・リーガ(もうひとつのリーガ)」と呼ばれていたほどだった。

優勝なんて夢のまた夢、どこが3位になるかくらいしか目標がなかった時代である。

その後、アトレティコにシメオネがやってきて、状況が変わるのだが、その前の話である。

エメリ監督は、そんな時代の「オトラ・リーガ」で連続優勝(つまり3位)し続けた監督である。

もっとも、今ではEL準決勝でアーセナルに対して地力の差を見せつけたアトレティコだが、当時はまだ不安定なチームだった。

そのアトレティコに加え、セビージャ、ビジャレアルあたりが当時のバレンシアのライバルであった。

バレンシアは、深刻な経営難に陥っており、選手層はそれほど厚くもなかったが、ダビド・ビジャであるとか、ダビド・シルバといったワールドクラスの選手もまだ少数は在籍していた。

若かりし頃のジョルディ・アルバをレギュラーに定着させたのもエメリ監督である。(今セビージャにいるバネガもたしかエメリ監督時代にデビューした)

連続3位におさまっていたのに、エメリ監督はそれほど人気のある監督というわけでもなかった。

サッカー自体がスペクタクルだったり攻撃的というわけではなく、どちらかというと玄人好みの采配をする監督だったからだ。

周到に相手を研究し、戦術的なディテールを詰め、セットプレーを含めて細かく入念に準備をして、勝ち点を取りに行く監督である。

そういう意味では、今アーセナルに欠けているものをもたらしてくれるのは間違いないと思う。

また、その後セビージャでEL三連覇という偉業をなしとげ、一発勝負のカップ戦はプロである。

また、セビージャは育てて売るが信条のチームであり、モンチという敏腕ディレクターが発掘してきた無名の選手をチームの中で機能させ、市場価値を上げることにも成功していた。

磨けば光る原石を発掘するのが上手なミズリンタットさんとの相性はいいかもしれない。もちろんアーセナルでは、育てたって売る必要はない、というか売らないでほしいけどね。

さらにその後に行ったパリ・サンジェルマンでは、ネイマールを無理やりポジションにはめ込んで生かさないとダメというミッションもそれなりにクリアしていたし、スター選手の扱いについても若干の経験があるのは心強い。エジルをよろしくお願いします。

1点だけ、心配なとこがあるとすれば、戦術家で研究熱心ではあるんだけど、見て楽しい魅力的なチームを作った経験のある方ではないので、そのあたり、グーナーが長い目でみることができるかどうか。もしうまくいって、勝ち点が取れるようになり、CLに復帰したり優勝争いに絡めるようになってきたら、それだけでも嬉しいが、サッカーの内容をめぐって賛否が起こる気がしないでもない。

まあ、嬉しい悩みですけどね。

というわけで、愛着のあるエメリさんには断然期待しよう。

パリから選手を連れてきてほしいところ。

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