先入観。いろいろあれども…。(点字の小噺 第6話)

(15、6年前に自分のHPにアップしていた点字にまつわる話です。拙い文章ですが、HPのサービスが終了した為、こちらに転載しています。寛容な心でお読みください。)

A:はい。それじゃこの点滴をして、手術は眠ってしまえばすぐに終わりますので。
B:そうですか。ありがとうございます。
A:では、睡眠薬が効いてくるまで、少し世間話でもしましょうか?
B:そうですね。そうそう、最近イタリアからの留学生が私のクラスに来たんですよ。
A:イタリアですか?かっこよさそうですね。
B:そうでしょう?それでイタリア仕込みのナンパの技を聞いてみまして。
A:ほうほう。どんなものなんですか?
B:まず、初めに相手の目をじっと見つめる(5秒以上)。
 :次に、相手が何かを言おうとしたら、じっと見つめながら手でさりげなくそれを遮る。そこで、ため10秒。
 :そして、最後に「会えて嬉しい。生まれる前から君の事を想っていた。」と言って、そっと口付け。
A:はぁ…。それで落ちてしまうのですか?さすがイタリアですね。
B:それが、「そんな訳ないだろ!」と、言われ、みぞおちに一撃。あえなく失敗したそうです。
A:なんだ。そう簡単には、いかないのですね。残念です。
B:イタリア人だから、くどき上手というわけではないと知って、それは先入観だったんだと思いました。
A:イタリア人にも恋にうとい人がいると言う訳ですね。
B:ところで、先生はこの手術は何回目ぐらいですか?
A:もう数え切れないですねぇ。
B:さすが、名医となると違いますね。
A:えぇ、臓器摘出ぐらいわけないですよ。はっはっは。
B:えっ!臓器って…もうちょうの…しゅ…じゅつ…でしょ…、…ど…いう…(パタッ)。
A:ふふふ。…もしもし、はい、準備完了です。1時間ほどで全て摘出できますので。…では、始めますか。

 街で、電車で白杖をもっている人をみたら、目の不自由な人だと思いますね。おそらく、あっているでしょう。
でも、目が見えないだけなのでしょうか?よく、目の見えない人は、聴覚が鋭くなるなんて言います。音に対する意識が目の見える人よりも鋭くなるという訳です。でも、みんながそうなのでしょうか?
 結論から言ってしまえば、違います。目も見えず、耳も聞こえない人だっています。
目も見えない人も、耳の聞こえない人もいるのだから、単純に考えればそのどちらにも当てはまる人がいるのは当然です。
でも、白杖を持っている人を見かけるとどうしても目が不自由な人とは思っても、耳も不自由かもしれないとはなかなか考えられません。
理由は二つあります。まず、目と耳の重複障害をもっている人が少ないと言う事。
もう一つは、聴覚障害は見てわからない、目印がないと言うことです(補聴器などを付けている人もいますし、白杖を持ち歩かない人もいるかもしれないですが)。
 なので、例えば白杖を持った人が電車の中で落し物をして、拾った人が何度も「落としましたよ。」と、言っても、無視してる訳ではなく、聞こえていないので、反応もできないと言う訳です。
 ところで、実際にそんな人が一人で出歩いているものなのでしょうか?完全に見えず、聞こえずと言う場合には、誰かと一緒に行動する事がほとんどです。ですが、聴覚か視覚かどちらの感覚が少しでも残っている人の中には、一人で電車に乗ったり、移動をしたりする人もいるので、電車の例もありえない事ではないという事になります。

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