点字本、送ります。(郵便料金無料制度について)(点字小噺第8話)

(15、6年前に自分のHPにアップしていた点字にまつわる話です。拙い文章ですが、HPのサービスが終了した為、こちらに転載しています。寛容な心でお読みください。)

A:それが点字の本かぁ。ずいぶんでかいなぁ。
B:まあね。読み易い点字の大きさっていうのがあって、字を大きくしたり、小さくしたりもできないからこんなに大きくなってしまうんよ。
A:確かにねぇ。俺なんか普通の大きさでも触ってわからないのに、更に字の大きさを小さくされたらお手上げ。一生わからないよ。
B:普通の文庫本なんかでも大きな辞書2冊ぐらいにはなるから、もっと小さくできれば持ち運びが楽なんだけど。
A:ずいぶんかさばるね。ところで、点字の本ってどこで売ってるの?
B:ほとんど売ってないよ。だから、点字図書館から借りたり、ボランティアの人に点字に訳してもらったり、朗読してもらったりする事が多いみたいだね。
A:そうなんや。でも、点字図書館ってどこにあったっけ?
B:全国100件近くあるけども(平成7年)、ここから近いのは高田馬場にある日本点字図書館かな?
A:でも、高田馬場まで行って借りる事を考えると、わざわざ出向いて借りるのも大変やねぇ。俺やったら駅前の本屋で済んでしまうわけやし。
B:だから、郵便でのやり取りが多いみたいだね。
A:でも、郵便料金も結構な値段になるんじゃないの?こんな大きな本をいくつも送ってたら。
B:タダだから、お金はかからないよ。
A:タダ?え、ほんとに?
B:そう、点字の郵便物とかは無料で送ることができるんよ。
A:へぇ、でもなんで?
B:点字図書館は数も多くはないから、なかなか出かけるのも大変だし、ボランティアの人に点字の本を作ってもらうにも郵便料金がかかっては結構な金額がかかるから負担になってしまうし。点字の本って何冊もあるわけではないから、友達同士で回し読みする事も多いし。郵便料金がかかるという事で思うように本が読めないとか、手に入る情報が制限されないように無料の制度がもうけられているんよ。
A:なるほどねぇ。

 さて、点字の本や手紙がタダでやり取りできるって知ってました?
小話にもある通り、点字の本はかさばるので、これを有料でやりとりするのは、点字図書館などの視覚障害者の為の団体や個人にとって大きな負担となります。
そこで、点字の本や手紙は部分的に開封して中が点字のものであることがわかるようにし、“盲人用”と記載すれば、無料でやり取りができます。録音図書(注)等についても同様の措置がとられています。
 このような措置は、視覚障害よって得られる情報が限られているのに加えて、経済的負担により更に情報が制限される事がないように設けられているものです。

 (以下は、平成14年6月現在での内容です。)
 ですが、この制度がいつまでも続くかどうかはわからないのが現状です。
今、郵政公社化関連法が国会で議論されています。この中の話題の一つに第三種・第四種郵便に関するものがあります。
現在の規定では、第1種は信書、第2種は葉書。第3種郵便は、新聞、雑誌、機関紙などの定期刊行物で、心身障害者団体が発行するものや、毎月3回以上発行されるものなどは特に小額で取り扱う措置があります。
第4種は、通信教育のためのもの、盲人用点字、盲人用録音物又は点字用紙、農産種苗、学術刊行物です。
 ところで、郵政公社化関連法案で第三種・第四種郵便の存続は盛り込まれましたが、第四種の無料規定(盲人点字、点字図書等)が削除されています。
 一応、「盲人用郵便物について、無料の取り扱いをするとともに、心身障害者のための政策的軽減料金の維持に特に配慮すべきこと。」
という付帯決議が採択されており、しばらくは無料規定が続けられるようです。ですが、付帯決議には法的な拘束力はなく、将来的には有料化されるという事が十分ありえるという事で、あくまでも無料規定を法律に明文化する運動が行われています。
 テレビや新聞等で第四種郵便に関する事を取り上げていたら、この話題のことです。成り行きに注目してみてください。

(注)点字を読み書きできる人は、5万人程度と言われており、盲学校で小さいころから点字を使用している人が多いです。
ですが、高齢になってから中途失明する人も多く、点字を使用できない視覚障害者の人数の方ができる人の人数を上回っています。
ですので、本を朗読した音声テープ(録音図書)も点字本と同様に点字図書館で貸し出されており、本を朗読して、録音図書を作成するボランティアも多数いらっしゃいます。
また、録音図書の郵便料金も点字本と同様に無料でやり取りされています。

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