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尻から生まれた本

週プレ連載宣伝回。今回取り上げた本の特徴について書く。

今回の本は『お尻の文化誌』である。

以前にnoteで紹介した時にも書いたが、本書はちょっと独特な感じの内容である。まず第一に対象が女性のお尻の外形であり、穴には言及しないのだ。お尻なんだから当然ではないかと思うかもしれないが、俺の感覚では「尻×文化」は穴の方が人気である。例えばこんな感じで。

そのため『お尻の文化誌』はこれらの本と組み合わせて扱うのは難しく、手持ちの別の本と組み合わせて記事を書くことにした。俺はこれまでお尻に特化した本は『尻叩きの文化史』くらいしか持っていなかったが、おっぱいや進化心理学の関係で集めた本の中に尻が関わるものもある。それらを参考にしながら、記事のネタを考えた。

もう一つ『お尻の文化誌』が特徴的なのは、時代が偏っていることである。本書は第一章で進化の話を扱う。なぜヒトのお尻は丸く、男性は女性の尻に惹かれるのか、と。本しゃぶりでもお馴染みダニエル・E・リーバーマンも登場し、様々な観点からヒトのお尻について語る。このような進化から始めるのはありがちな展開だ。

だが第二章で一気に時代が飛び、サラ・バートマンが主役である。確かに女性のお尻について語るなら彼女は外せないと思うが、18世紀後半から19世紀初頭の人物だ。いくらなんでも飛ばし過ぎではないだろうか。

おっぱいの場合は古代、中世、ルネサンス、近世と、様々な時代の乳房観や美術での扱いを紹介することが多い。お尻はおっぱいほどでは無いだろうが、同じようなことはできるはずである。実際『百万人のお尻学』はそういう構成になっている。

だが『お尻の文化誌』はそうせずに、19世紀以降の西洋におけるお尻に、そのページの大半を費やしている。この狭い範囲だけでも取り扱う内容は豊富で、読んでいて薄いとも物足りないとも思わない。とはいえ、なぜここまで偏った構成にしたのだろうか。

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