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がん治療の科学的根拠について

こんばんは!今日はちょっとカタイテーマを。「がん治療の科学的根拠」について自分の知見や思うことを綴りたいと思います。

・がんは誰もが罹患する可能性がある病気

今や日本人の2人に1人はがんに罹患する時代。しかし、がんは50代以降に多く発生することを考えると、日本人の平均寿命が延びたから、がんに罹患する方が増え、亡くなる方が増えてきたのだと思います。

がんは細胞のコピーミスによる病気ですから、やはり誰もが罹患しうる病気です。発生した部位から転移・再発を繰り返す、実に厄介な病気です。

私が罹患した精巣がんについて正直なぜ罹患するのかがよく分かっていないそうです。ただ精巣がんはかなり抗癌剤が効くことはわかっているため、私の場合も3クールのBEP抗癌剤治療によって、見事にCTでがん細胞が消えるまで縮小したほど効果的でありました。


・がんの標準治療について

がんの標準治療(この場合の標準は、Normalではありません。Bestです)は

① 手術

② 抗がん剤

③ 放射線治療

の3つですね。今はこの3本柱に「免疫療法」というのが4本目の柱になりえるということで、世界各地で研究や臨床実験が行われているとききます。


・日本におけるがんの民間療法はインチキが多い

しかし、まだ科学的に効果があると認められていないままに、特に日本では、いわゆる末期ガンなど、標準治療の効果が薄い患者に対して、1回数十万円、下手したら数百万円もの法外な治療費を請求し、それでいて効果がほとんどなかったという話をよく聞きます。

最近朝日新聞が、がんに有効とは言い難い、科学的根拠のないがん治療法(重曹を使う?)の広告を大々的に打っていました。それに対し、以下のツイートは腫瘍内科の勝俣範之先生のもので、朝日新聞がほとんど検証もしないままに広告に載せたことの抗議です。

このツイートの反響は大きく、約1万ものリツイートやいいねを記録しております。

このツイートを受けて、NHKも記事を出しており、独自に取材して作っています。


・エビデンスレベル

ここで「エビデンス」という言葉ですが、これは「根拠」と訳されることが多いです。その治療法の「客観的な根拠」がどのように確立されるのかは、下の図の有名な「エビデンスレベル」で説明できます。

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詳しい階層の説明は避けますが、一言で言えば「上に行けば行くほどバイアス=偏見が排除されたもの」と言えます。「専門家による意見」はいくら専門家といっても、その専門家によるバイアスが多分に含まれますから一番下位なのですね。

私の見解が正しければ、確か標準治療である「手術」「抗がん剤」「放射線治療」は最も上位のメタアナリシスやシステマティックレビューレベルであり、治療法として確立されている。よって「標準」と名はついていますが、現代医学の治療法としては「最高=ベスト」だということです。

私が患った精巣腫瘍もBEP療法や放射線治療の有効性が確認されており、私はかなり特殊ですが、2クール目の終わりの方でCTを撮った結果、ほぼ腫瘍は消えており、BEP療法=抗がん剤治療の効果は抜群でした。

しかしながら、いわゆる標準治療ではない、代替療法や民間療法には研究は進んでいるとは思いますが、正規の大規模な臨床を得ないまま(メタアナリシスやシステマティックレビューレベルの)「絶対に治る!」とか「最後の希望!」といった甘い言葉で、根拠のない治療法でなけなしのお金をむしり取るということが特に日本では横行していると聞きます。

彼らは白衣を着た卑劣な詐欺師であり、ステージ4で標準治療の効果が望めず、治ることが見込めるならお金なんていくらかかってもいいから治してほしい、という患者自身や家族の思いを踏みにじっています。


・人間の体に絶対はなし!

ただ、最も上位のエビデンスレベルをもってしても、その治療法によって100%治る!ということは言い切れないでしょう。友人の医師が言っていたのが、

「今の医学では人間の体のたぶん20%くらいしか分かっていない」

というセリフが印象的でした。がんに限れば、全身に広がっているがんと、局地的にとどまっているがんではまるで病態が違うし、私のように治るがんもあれば、残念ながら発覚したころには治らないがんがあるのも事実でしょう。がんは治りやすい病気になったとはいえ、これまた「絶対に治る」ということは存在しないのでしょう。

精巣腫瘍診療ガイドライン2015年を読んでも、高い確率で治るとは書いてあっても、「100%」とか、「絶対」、などの言葉はどこにも書いてありませんでした。予想できないこと、時に不可解なことが起きるのが人間の体なのでしょう。

ですから、「人間の体に絶対はない」ということを念頭に、治療方針やらを考えるべきだと思います。であれば、詐欺師の甘い言葉に騙されることも少なくなるのではないでしょうか。


・予防こそ一番大事!

よく想像します。

私がもし、全身にがんが広がり、それこそ骨転移して猛烈な苦痛に襲われたとしたら・・・。また愛する家族がそうなってしまったら・・・。今は冷静に書いていますが、最後の救いを求めて、科学的根拠のない代替療法などに頼ってしまいたくなるかもしれない。

こればかりは当事者にならなければわかりません。しかし、こういった患者や家族の願いを逆手にとって、大儲けしようとしている人も一定数いるのも事実。もう一度「人間の体に絶対はない」原則を振り返り、騙されず、惑わされないようにしたいものです。

そして最大の防御策はそうならないようにすること。ストレスを極力ためない、バランスある食生活、良質な睡眠、適度な運動、体に違和感があれば受診をする、など。

もうあのような抗癌剤治療の辛さは二度と経験したくない!愛する家族にも味わって欲しくない!だからこそ、予防に努め、最大限がん罹患の回避を行いたいと思います。

・期待

今も医療の進歩は目覚しい。科学的根拠の薄い代替療法などゴメンですが、一方で新しい治療法の期待もしております。

特に期待が高いのが免疫療法ですね。こちらはインチキ療法が多いのも事実ですが、心ある研究者が日々研究しているのもまた事実。

ガンサバイバーとして、がん治療のこれからを今後も注視し、必要があれば情報発信もしていきたいと思います。長文読んでいただき、ありがとうございました!

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