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色恋は蜜の味の毒

私はたまに行くバーがある。

ある時久々に行くと、1人綺麗めの女性が座っていた。

気にはしつつも離れて座ると、バーのマスターが話を繋げて紹介してくれた。

その女性とは昔の仕事の共通点と話しやすさ、親しみやすさ、女性的魅力もありすぐに距離が縮まった。

なんでもお店をしているようで、そこにも何度か行くようになる。

そんなある時マスターの持っている某クラフトゲームや某サバイバルゲームを各自の家で3人でチャットしながらやるようになる。

人見知りな私だが女性に心惹かれている所もあり、加わっていた。

家でお酒を飲みゲームを朝方までやる。

お店で3人で飲むこともしばしばあった。


当時彼女がいた私は、やましい心と葛藤しつつも女性に接していた。
しかし、あるタイミングで女性に見透かされた様な感覚に襲われた。
気が動転してしまい、またやましさを良しとしない心を持ち始めていた私はゲームから、バーからも離れていった。


半年か一年だったろうか定かでは無いが、落ち着いた私はまたバーを訪れた。

そこにはあいも変わらずその女性が座っていた。
気持ちの整理がついていたつもりの私だが、
またバーや女性のお店に行く様になる。 

女性のたわいもない話と愛嬌と親しみが、わたしの心を包んで行く今思えば蝕んでいったのだと思う。

ある時バーのマスターが女性のいるところで他のお客様とカウンター横の客席のソファーでいちゃつき始めた。

オブラートに包んでいるが、事を始めそうな勢いだったのだ。

女性は仕事中に他の人がいる前で始めることに怒った様で、(その時私と女性、マスターと例のお客様しか居なかったのだが)女性は私に

他のお店に行こう!

と、言い出て行った。
私もその後を追う。

夜も遅く色々と店を当たったのだが大抵空いていなかった。

やっと見つけたお店は小料理屋だった。

お店の人と話すと、もうすぐ閉めるつもりだったらしいが、少しなら良いという話だった。

それに2人で甘えて飲み始める。
始めは愚痴が入っていたのだが、他の話に移り、段々と話が弾んで楽しくなっていた。

後々思ってみれば私には珍しく記憶が酔いで欠落していて所々しか思い出せないのだが…

勢いで、私は好意を持っている事を伝える。
私自身の整理がついたら改めて告白するという訳の分からない事を言ったと思う。

女性の返しはこうだ。

その時改めて返事するね。

後から思えば断られたも同義なのだが、舞い上がった私はバーでも会うのだが…

誕生日の前祝いに食事に誘い、同伴する。
誕生日には女性の店で身の丈に合わないシャンパンを開ける。

クリスマス前にも食事に誘い、少しハイブランドのプレゼントをあげるなどする事となる。

クリスマスの時は話が弾み仲良さが感じられた。

そのあとイルミネーションを見ようかという話になり、近くの公園へ行きロマンチックな感じで、告白した。

相手は

夜のお店なので会えないかもしれないけどそれで良ければよろしくお願いします。

と言い、私の心は有頂天になった。



ならば良かったのだが、事はそうはならなかった。
お店を奢る時も、プレゼントの下りでも微妙な顔をしている。


別の時バーを2人で出て、別れた後タクシーが捕まらずバーに戻った。

いつもは直ぐには閉めないバーの扉が鍵が掛かっている。
何の気なしにバーのマスターに連絡をすると少ししてから扉が開く。

店にはバーのマスターと片付けの用意のゴミ袋。
とは別にカウンター内側の精力剤を私は見逃さなかった。

まあそういう事もするよなぁとは思ったのだが、程なく電話がマスターにかかってきた。

なんて言ってた?

電話の聞き覚えのある声はそう言った。

そこで今まで気付かないフリをしていた事が繋がってしまった。


大抵女性とは一緒に帰り、近くのコンビニの外で別れるのだが、私がタクシーを呼んでいる間などにコンビニの中から女性が消えているのだ。

しかしながらバーには裏のエレベーターに繋がる扉がある。

そのバーに私が戻る事もあったのでバーに向かいなおすことは無いはずだ。

そして違和感を感じて女性の後を不本意ながら見た時私は気づいた事があるのを思い出した。

コンビニの横の道を通り、曲がった裏手にバーのマンションの住民用の入り口がある事。

女性は直線の道路なのにも関わらずバーとコンビニの間で消えるのだ。


バーのマスターは遊び人だがそういう所は分けていると思っていたし、そう言っていた。


しかしこうも言っていた。
俺は優しい嘘はついても良いと思っていると…

今日確認のため飲みに行った。
確認と言っても自分自身の中で状況を整理しながら軽く飲んで帰るつもりだった。
女性は最初居なかったのだが、マスターに電話が掛かってくる。

空いてるよー
え?くるの?

恐らくあの女性だろう。
女性はほぼ毎日の様に来ている事は知っていたが、その時点でクロである。

しかし会話や内容、
マスターが歌う時の女性の視線、
細かな2人での機微、
マスターのメールの送信に少し遅れて女性のスマートウォッチが鳴るなどなど

今まであった出来事を再確認して確信を得る。

私は個人的に、欲の絡んだ嘘に優しいとか厳しいとかはないと思う。
そして甘美な虚構より辛辣な現実が得るものがあるとも思っている。

そして2人の関係性が気になり、執着している自分に気付く。

執着や嫉妬などの欲は判断を鈍らせる。
と言うのを図らずと学んだのだった。

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