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マランのジャンベ

マランという小さな町にジャンベを受け取りに行った。マランには以前住んでいたことがあった。正確には藪の中にテントを張っていた。日本でいうところのホームレスか。ここでも同じくホームレスと見られていたかもしれないがわたしにその自覚はなかった。ともかく、マランには繋がりを感じていて、そこに住むマエストロが作ったというジャンベを買いに行ったのだ。売主は去年の大雨で家が流されてしまって今は友達のコテージに住んでいる男で、家財一式、売れるものは全て売っていた。ジャンベを見せてもらい、軽く叩かせてもらう。ある程度整理がついたらバリにいる弟に会いにいくよ。男は少し疲れてはいそうだったが芯のしっかりした印象を受けた。年は50過ぎほどだろうか。ルーツは南米にあり両親にも会いに帰るらしい。ニュービギンだねと言うと笑っていた。過去には菓子パンの材料を日本に輸出していて何度か日本に行ったこともあるらしい。最後にハグを交わして受け取ったジャンベにはMULLUMと手彫りで刻まれていた。
今日は一時間ほどジャンベを叩いた。同じリズムを、ポリリズムというのか、ずっと叩いていると、ある一区切りのリズムが永遠に繋がっていき境目がなくなる。左右の手は別のリズムを叩きそこから一歩離れたわたしが左のリズムを感じたり右のリズムを感じたり敢えてリズムを区切って感じたりする。ゆっくりとトリップしてトランス状態に入っていった。呼吸だけに集中する瞑想のように他の一切が消えてしまってリズムだけの世界に私が溶けていく。これはとても気持ちよかった。わたしは気持ちいいことが大好きだ。これから毎日叩いていって一体どうなってしまうだろうとわくわくする。いつか三昧に入れるだろうか。楽器は世界を広げてくれる。

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