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酒とタバコと盗人

書きたいから書くで文章を始めてもいい。自分語りの文章はつまらない気もするが、つまらないは人が決めることで、書けた書いた感触が快感につながっているから大丈夫だ。脳の快感を感じる神経は繰り返し使われることによって強化されていく。もっと気持ちよくもっと気持ちよくと求める一方で、快感自体には慣れてしまうから際限がない。というより限界を迎えれば死んでしまうかぶっ壊れるか。どちらも同じか。どちらにしろ死んでしまった本人、壊れた本人には関係のない話だ。そんなことは知らずにはいさようならと次の世界に行っている。書けないと思い込むのは自分にはいいものが書けると勘違いしてハードルを掲げているのだ。まっすぐ走れる道に自分でハードルを用意して大変だここは走りづらいという。側から見なくてもバカだそれは。走っていられれば書いていられれば気持ちいいのだから近所の公園だろうが皇居の周りだろうが狭い畳3畳の部屋だろうが走り回っていればいい。狭くて走れないじゃなく、歩くと走るの境界線だって自分で決めてしまえばいいのだ。書けば流れていくと思いきや、何の話だったか。考え出した途端に止まってしまう。考えたところで何も出て来はしないのに。人は何がしかに依存して生きていく。よく聞く言葉、なんかつまらないけど本当だろう。酒やセックスやドラッグはわかりやすい。人間関係、親子恋人友達、目に見えない分、糊は強固で剥がしづらい。書くことにも人はきっと依存できる。それはきっと気持ちがいい。金もまあかからないし。人に見せることもできる。それで金を稼ぐ奴だっている。ああそんなヤクザな商売で飯を食えたら面白いだろう。とにかく。うんこだって再利用できる価値があるのだ。洗っていない頭から擦り落ちるフケのような文章でももしかしたらなんかの、せめて自分の役には立つかもしれない。事実今こうして書いているだけで少しは楽しみを感じられている。風で急にドアが開く。下の道路を行く車から爆音のレゲエが流れている。天気は今日も良くて、なのについに空っぽになったウイスキーの瓶とほとんど残っていないコップの酒を今飲み干した。今日4月28日には来ているはずだった待ち人は延期に延期を繰り返し5月の終わりにやってくる。それも定かではない。少しずつ目減りしていく口座の金は毎日毎秒減っていく生の時間のようだ。僕らはみな死に向かい愉快に歩き続ける。笑ってボトンと一瞬で、落とし穴に落ちるように消える。何もしたくないと何かしたい。でも人間は必ず何かをしたがっている。それは動くことでしかわからないのだけど、現実が沼のように人を飲み込む。それは幻想だ。バカみたいな音を立てながら加速する車。電柱に激突でもしたら僕はきっとただただ笑うだろう。いつも以上に意味もクソもない文章。考えもしないで打つ言葉。思考すら通さずにそのままに生まれた言葉はもちろん行く宛もない。迷うのは目標の地があるからで浮浪者は街を歩き続ける。砂漠もジャングルも、腐った街角も、喧嘩する二人も、冷たい風も、明日というウソも、またねという優しさも、吸い殻の散らばる道も通り過ぎて、眠れる場所を浮浪者だけが見つける。ここまで書いてタバコを吸おうとしたらもう一本分もなかった。何かが途切れて書く手が止まる。すぐそばにある、近所の駄菓子屋みたいな懐かしい売店でタバコは買える。吸いたいのに買いたくない自分がいる。金がないから心臓が痛いからか動きたくないからかわからない。自分で動くことでしか何もわからないと言っていたのに、笑ってしまう。怠惰な人間とは分かっているのに動かない人のことだ。何だか歩きたくなってきた。

金もないのに酒とタバコを買う。いや金がないから酒とタバコを買う。ほとんど絞まりかけている首を最後くらいはと自分で絞めたくなるのが人間だ。酒屋のレジで安い酒を選んだあとタバコがあるか尋ねると、タバコを並べて見せる前に店主がさっと酒を奥に下げる。盗人が平気でいる街だからしょうがない。わたしもそれなりに酷い顔をしていたのだろう。街の中心のスーパーマーケットでダボつくパンツの中に男が商品を隠し入れる。たかだか数ドル、されど数ドル。一瞬、男と目が合う。男もわたしも笑わない。無表情の感情のやり取り。バタバタと荒っぽく男が立ち去る。わたしはそのまま卵のコーナーに行って割れずに揃って整列する卵を確認してからカゴに入れる。卵の1つに羽毛がへばりついている。これは鳥から生まれてきたものだという当然の事実を私は改めて認識する。日本の卵は基本的には卵を洗ってからパックされる。だから生で食べても大丈夫なのだとテレビか何かで見た、記憶は定かじゃない。ここの卵も半生で私は食べる。何か病気になるかもしれないと思いながら、口を開けて体内に入れる。もう病気になっている可能性もある。というより頭の方がもうきっとおかしい。出歩かなければ。運動が日の光かりが頭の歯車を掃除する。まともな頭でまともな歩き方で街を歩く。今は街中の小さな公園だ。他に人はいない。さっきまで近くに女の子が座ってパンか何かを食べ、こうして書いている間に立ち去っていった。公園は急な坂になっていて、3段ほどだけ舗装され座れるようになっている。前のほうに座っていた女性は汚れた服とボロボロのバックを脇にただ座っていた。何をすることもなく中空を見つめていた。私がタバコを半分ほど吸ったあたりで立ち去っていった。ほとんど入れ替わるようにやってきたのが軽食を食べていた女の子だ。タバコの煙が気になっていそいそと消した。聞いているのはキッズリターンのサウンドトラックで、今はちょうどラストの二人乗りのシーンで流れる、私が1番好きな曲だ。確認すると『KIDS RETURN』と言う曲名だった。ラストの曲だからアルバムの最後かと思っていたら音が止まる。アルバムが終わった。同時に今手書きで書いているページの一番下の端だちょうどいいからやめる。

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